「シャッタースピードって、結局どのくらいに設定すればいいの?」カメラを買ったばかりの方が最初にぶつかる壁がここです。シャッタースピードは写真の「ブレ」と「明るさ」を同時にコントロールする設定で、被写体に合った数値を選べるかどうかで写真のクオリティが大きく変わります。結論から言うと、日常スナップなら1/125秒〜1/250秒、動く子どもやペットなら1/500秒以上、夜景や水の流れなら三脚を使って1秒以上のスローシャッターが目安です。この記事では、被写体別の設定早見表から、手ブレを防ぐ「1/焦点距離の法則」、さらにフリッカー対策や電子シャッターの注意点まで、シャッタースピードにまつわる知識を丸ごと解説します。
・シャッタースピードの仕組みと写真への影響(ブレ・明るさ・表現)
・被写体別の設定目安が一目でわかる早見表
・手ブレを防ぐ「1/焦点距離の法則」と手ブレ補正の活用法
・室内撮影のフリッカー対策と電子シャッターの注意点
シャッタースピードとは?写真の「ブレ」と「明るさ」を左右する設定

シャッターが開いている時間=光を取り込む時間
シャッタースピードとは、カメラのシャッターが開いている時間のことです。1/1000秒なら0.001秒間、1秒ならまるまる1秒間、センサーに光が当たり続けます。この時間が短ければ短いほど写真は暗くなり、被写体の動きは止まって見えます。逆に長ければ長いほど光をたくさん取り込むので写真は明るくなり、動いているものはブレて写ります。
カメラの世界では「1段速くする」と言うと、シャッタースピードの数値が2倍になり、光の量は半分になります。たとえば1/125秒から1段速くすると1/250秒です。この「段」の概念は絞りやISO感度にも共通するので、シャッタースピードで理解しておくと他の設定にも応用できます。
注意点として、シャッタースピードだけで明るさを調整しようとすると限界があります。暗い場所で速いシャッタースピードを使えば当然写真は暗くなりますし、明るい屋外で遅いシャッタースピードを使えば白飛びします。このバランスを取るために、絞り(F値)とISO感度を組み合わせて露出をコントロールするのが基本です。
露出の三角形|シャッタースピード・絞り・ISO感度の関係
写真の明るさ(露出)を決める要素は3つあります。シャッタースピード、絞り(F値)、ISO感度です。この3つは「露出の三角形」と呼ばれ、どれか1つを変えると他の2つで補正する必要があります。
たとえば、シャッタースピードを1/125秒から1/500秒に2段速くした場合、そのままでは写真が暗くなります。このとき、絞りをF5.6からF2.8に2段開ける、またはISO感度を400から1600に2段上げることで、同じ明るさを維持できます。
初心者の方には「シャッタースピード優先モード(S/Tv)」がおすすめです。シャッタースピードだけ自分で決めれば、カメラが絞りとISO感度を自動で調整して適正露出にしてくれます。まずはこのモードで被写体に合ったシャッタースピードを選ぶ練習から始めると、露出の三角形の感覚が身につきます。
【露出】写真の明るさのこと。シャッタースピード・絞り・ISO感度の3つで決まる。
【段(EV)】露出の単位。1段分の変化で光の量が2倍または半分になる。
【S/Tvモード】シャッタースピード優先モード。ニコン・ソニーは「S」、キヤノンは「Tv」表記。
「速い」と「遅い」で写真はこう変わる
1/1000秒以上の速いシャッタースピードでは、走っている人やジャンプの瞬間を空中で止めたように撮れます。スポーツや野鳥撮影で多用される設定です。一方、1/15秒〜1秒程度のスローシャッターでは、車のライトが光の線になったり、滝の水が白い絹のように流れたりする写真が撮れます。
ただし、スローシャッターには三脚が必須です。手持ちで1/15秒より遅いシャッタースピードを使うと、カメラ自体の揺れ(手ブレ)が写真に影響します。スローシャッターの表現に挑戦するなら、三脚とリモートレリーズ(またはセルフタイマー)を用意しましょう。
意外と知られていないポイントとして、シャッタースピードは「被写体ブレ」と「手ブレ」の両方に影響します。手ブレ補正で防げるのは手ブレだけで、被写体の動きによるブレは防げません。動いている子どもを撮るとき、手ブレ補正があるからと安心して1/30秒で撮ると、子どもだけがブレた写真になります。
1/焦点距離の法則を知れば手ブレは防げる
焦点距離が長いほど速いシャッタースピードが必要な理由
手ブレを防ぐシャッタースピードの目安として「1/焦点距離」という法則があります。50mmレンズなら1/50秒、200mmレンズなら1/200秒が手ブレしない下限の目安です。焦点距離が長い望遠レンズほど画角が狭く、わずかな揺れが大きなブレとして写るため、より速いシャッタースピードが必要になります。
APS-Cセンサーのカメラを使っている場合は、焦点距離に1.5倍(キヤノンは1.6倍)の換算が必要です。たとえば、APS-C機に70-300mmレンズを装着して300mm端で撮影する場合、35mm換算で450mmになるため、手ブレしない目安は1/450秒以上となります。この換算を忘れると、望遠撮影で手ブレ写真を量産してしまうので注意してください。
ただし、これはあくまで「平均的な人が両手で構えた場合」の目安です。カメラの構え方が不安定だったり、息を止めずにシャッターを切ったりすると、もっと速いシャッタースピードが必要になります。逆に、壁や柱にもたれて体を安定させれば、目安より1〜2段遅くても手ブレを抑えられることもあります。
手ブレ補正は何段分?ボディ内とレンズ内の違い
最近のカメラやレンズには手ブレ補正機能が搭載されています。手ブレ補正の効果は「段数」で表され、5段分の補正なら1/焦点距離の法則から5段分遅いシャッタースピードでも手ブレを防げる計算になります。50mmレンズなら、理論上は1/50秒から5段分遅い約1/2秒でも手ブレしないことになります。
手ブレ補正にはボディ内手ブレ補正(IBIS)とレンズ内手ブレ補正(OIS/VR/IS)の2種類があります。ボディ内はどのレンズを装着しても補正が効くメリットがあり、レンズ内はファインダー像が安定するため望遠撮影で狙いやすいメリットがあります。両方搭載の組み合わせでは「協調補正」が働き、より強力な補正効果が得られる機種もあります。
ただし、カタログスペックの補正段数は「最良条件」での値です。実際には2〜3段分の効果を見込んでおくのが安全です。また、手ブレ補正はカメラの揺れを吸収するだけで、被写体の動きによるブレ(被写体ブレ)は防げません。動く被写体を撮るときは、手ブレ補正に頼らずシャッタースピードを上げる必要があります。
APS-C機で望遠レンズを使うとき、レンズ表記の焦点距離そのままで「1/焦点距離の法則」を計算してしまうケースが多いです。300mmレンズならAPS-Cでは35mm換算450mm相当。1/300秒ではなく1/450秒以上を目安にしましょう。換算を忘れると、せっかくの望遠写真が手ブレで台無しになります。
三脚なしでスローシャッターに挑戦するコツ
三脚がない場面でもスローシャッターに近い撮影ができるテクニックがあります。まず、カメラを地面や手すり、テーブルなど安定した場所に置いてセルフタイマー2秒を使う方法です。シャッターボタンを押す振動を回避できるため、1/4秒程度までなら比較的シャープに撮れます。
次に、壁に背中をつけて脇を締め、息を吐ききった瞬間にシャッターを切る方法です。人間の体は息を吸うときに揺れが大きくなるため、吐ききったタイミングが最も安定します。この方法で、手ブレ補正搭載レンズなら1/15秒程度まで対応できることもあります。
ただし、どちらの方法も被写体が動いていればブレます。あくまで「手ブレ」を抑えるテクニックであって、「被写体ブレ」には効果がありません。動きのない風景や夜景のスナップ向けのテクニックだと割り切ってください。
被写体別シャッタースピード早見表|この数値で迷わない

| 撮影シーン | シャッタースピード目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 風景・静物 | 1/125秒〜1/500秒 | 三脚使用時はより低速も可 |
| 人物(静止) | 1/60秒〜1/125秒 | 表情のブレに注意 |
| 子ども・ペット | 1/250秒〜1/500秒 | 予測不能な動きに対応 |
| スポーツ・野鳥 | 1/500秒〜1/2000秒 | 連写モード併用推奨 |
| 流し撮り | 1/60秒〜1/125秒 | 背景が流れ被写体が止まる |
| 滝・渓流(シルキー) | 1/4秒〜2秒 | 三脚+NDフィルター必須 |
| 夜景(三脚) | 数秒〜30秒 | リモートレリーズ推奨 |
| 夜景(手持ち) | 1/15秒〜1/60秒 | ISO感度を上げて対応 |
| 花火 | 2秒〜8秒(バルブ) | 三脚+レリーズ必須 |
| 星空 | 15秒〜30秒 | 500ルールで上限を計算 |
風景・静物|1/125秒〜1/500秒で安定した描写
風景や静物など動かない被写体の場合、1/125秒〜1/500秒あれば手ブレの心配はほぼありません。晴天の屋外ならISO100・F8〜F11の絞りと組み合わせて、パンフォーカス(全体にピントが合った状態)で撮影するのが定番です。
三脚を使う場合は、もっと遅いシャッタースピードでも問題ありません。F11〜F16まで絞り込んで回折の影響を最小限に抑えつつ、ISO100で最高画質を狙えます。ただしF16以上に絞ると、回折現象で逆にシャープさが低下する機種が多いので、やみくもに絞ればいいわけではありません。
風景撮影でありがちな失敗は、オートモードで撮影して必要以上にISO感度が上がってしまうケースです。三脚を使って低速シャッターが切れる場面なのに、カメラが手ブレ防止のために自動的にISO3200まで上げてノイズだらけの写真になることがあります。風景撮影では「シャッタースピード優先モード」より「マニュアルモード」または「絞り優先モード+三脚」のほうが合う場面も多いです。
人物撮影|静止は1/60秒、動きがあれば1/250秒以上
じっとしている人物を撮る場合、1/60秒〜1/125秒が目安です。ただし「じっとしている」と思っても、まばたきや微妙な体の揺れがあるため、安全策として1/125秒以上を使うのがおすすめです。ポートレートで背景をぼかしたいときは、F1.8〜F2.8の明るいレンズを使えば、速いシャッタースピードでも十分な光量を確保できます。
歩いている人や軽い動きのある場面では1/250秒、走っている子どもや動き回るペットなら1/500秒以上が必要です。特に子どもやペットは動きが予測できないため、「ちょっと速すぎるかな」と思うくらいの設定で構えておいたほうが成功率が上がります。
室内での人物撮影は光量が少ないため、シャッタースピードを上げるとISO感度が跳ね上がりやすくなります。ISO6400以上ではノイズが目立つ機種も多いので、外付けストロボやLEDライトで光を補うか、F1.4〜F1.8クラスの明るいレンズを使って対策しましょう。
スポーツ・動体|1/500秒〜1/2000秒で動きを止める
スポーツや野鳥など速い動きの被写体を撮る場合、最低でも1/500秒、できれば1/1000秒〜1/2000秒が必要です。サッカーのシュートの瞬間やツバメの飛翔を止めて撮りたいなら、1/2000秒でも足りないことがあります。
高速シャッターでは大量の光が必要なため、明るい望遠レンズ(F2.8〜F4クラス)が有利です。ただし、F2.8通しの望遠ズームは価格が20万円〜40万円と高額なので、予算が限られるならF5.6〜F6.3のレンズでISO感度を上げて対応する方法もあります。ISO3200〜6400程度なら、最近のカメラは十分実用的な画質を維持できます。
動体撮影ではAF(オートフォーカス)の設定も重要です。AF-C(コンティニュアスAF)に設定し、被写体追従を有効にしておきましょう。シャッタースピードが十分でも、ピントが合っていなければ意味がありません。連写モードを「高速連写(秒間10コマ以上)」に設定しておくと、決定的な瞬間を逃しにくくなります。
夜景・星空|三脚を使った長時間露光の世界
夜景撮影で手持ちの場合、1/15秒〜1/60秒にしてISO感度を1600〜6400まで上げるのが一般的です。手ブレ補正が強力な機種(5段以上)なら、1/8秒程度まで手持ちで粘れることもあります。
三脚を使えば、数秒〜30秒の長時間露光で光量を稼げるため、ISO100のまま低ノイズで撮影できます。車のヘッドライトが光の軌跡になり、水面が鏡のように静まる長時間露光ならではの表現も楽しめます。
星空を点として撮りたい場合、「500ルール」で露光時間の上限を計算できます。500÷焦点距離(35mm換算)=星が流れない最長露光秒数です。24mmレンズなら500÷24=約20秒が上限です。これ以上の露光時間では星が線になって流れます。APS-C機の場合は換算焦点距離で計算する点を忘れないでください。
シャッタースピード優先モード(S/Tv)の正しい使い方
S/Tvモードが向いている場面と設定の手順
シャッタースピード優先モードは、シャッタースピードを自分で決めて、絞りとISO感度はカメラに任せるモードです。ニコン・ソニーでは「S」、キヤノンでは「Tv(Time value)」と表記されます。
このモードが最も活きるのは「ブレを確実に止めたい」場面です。運動会、ペット、スポーツなど、被写体の動きに合わせてシャッタースピードを固定し、露出の調整はカメラに丸投げできます。逆に風景やポートレートなど「ボケ量を優先したい」場面では、絞り優先モード(A/Av)のほうが使いやすいです。
設定手順はシンプルです。モードダイヤルをS/Tvに合わせ、コマンドダイヤルでシャッタースピードを選ぶだけです。ISO感度は「オート」にしておくと、暗い場面でも自動的にISO感度が上がって適正露出を保ってくれます。ISO感度の上限を設定できる機種では、ISO6400〜12800あたりを上限に設定しておくと、ノイズが増えすぎるのを防げます。
「露出オーバー」点滅が出たらどうする?
明るい屋外でスローシャッターを使おうとすると、カメラが「これ以上絞りを絞れない」状態になり、絞り値が点滅して露出オーバー(白飛び)を警告することがあります。たとえば、F22まで絞っても光量が多すぎるケースです。
この場合の対策は2つあります。1つ目はNDフィルター(減光フィルター)を使う方法です。ND8なら3段分、ND64なら6段分の光量をカットでき、明るい屋外でもスローシャッターが使えるようになります。滝や渓流のシルキー表現には必須のアクセサリーです。
2つ目はISO感度を最低値(ISO100やISO64)に手動設定する方法です。ISOオートのままだと、カメラが勝手にISO400〜800を選んでしまい、光量が余る原因になります。スローシャッターを使いたい場面では、ISO感度をオートではなく最低値に固定しましょう。
シャッタースピード優先モードでありがちな3つのミス
1つ目は「ISO感度オートの上限を設定し忘れる」ミスです。上限を設定しないと、暗い場面でISO25600やISO51200まで上がってしまい、ノイズだらけの写真になります。撮影前にISO感度の上限を確認する習慣をつけましょう。
2つ目は「被写体に対してシャッタースピードが遅すぎる」ミスです。止まっているように見えても微妙に動いている被写体は多く、特にポートレートでのまばたきや手の動きは1/60秒では止まりません。迷ったら速めに設定するのが安全です。
3つ目は「逆光や明暗差の大きい場面で露出補正を忘れる」ミスです。シャッタースピード優先モードでもカメラの測光は万能ではありません。逆光では被写体が暗くなりやすいため、露出補正を+1〜+1.5段入れて明るさを調整してください。
遅いシャッタースピードで表現の幅を広げる
流し撮りのコツ|1/60秒〜1/125秒で背景だけを流す
流し撮りは、動く被写体にカメラを追従させながらシャッターを切るテクニックです。被写体は止まって写り、背景だけが流れるスピード感のある写真になります。シャッタースピードは1/60秒〜1/125秒が目安です。
成功のコツは「腰の回転で被写体を追う」ことです。腕だけでカメラを振ると軌道が安定しません。足を肩幅に開き、上半身ごと滑らかに回転させながら被写体を追い、シャッターを切ったあとも追従を止めないフォロースルーが重要です。
流し撮りは失敗率が高いテクニックです。10枚撮って1〜2枚成功すれば上出来と考えてください。連写モードで撮影し、帰宅後に成功カットを選ぶのが現実的な方法です。最初は1/125秒から練習して、慣れたら1/60秒、1/30秒と徐々に遅くしていくと上達が早くなります。
滝・渓流をシルキーに撮る|NDフィルターの選び方
滝や渓流の水を白い絹のように撮るには、1/4秒〜2秒程度のスローシャッターが必要です。日中にこれだけ遅いシャッタースピードを使うと白飛びするため、NDフィルター(減光フィルター)が必須です。
NDフィルターの選び方は、撮影する明るさとシャッタースピードの組み合わせで決まります。曇りの日にF11・ISO100で撮影する場合、適正露出のシャッタースピードが1/125秒だとすると、1秒まで遅くするには約7段分の減光が必要です。ND128(7段分)が適しています。晴天ならND1000(10段分)が必要になることもあります。
注意点として、可変NDフィルターは便利ですが、安価な製品では色かぶり(マゼンタやグリーンの変色)が出やすくなります。予算に余裕があればKenko・Marumi・HAKUBAなどの固定NDフィルターを2〜3枚揃えるほうが、色の正確さでは有利です。
SDカードの書き込み速度が遅いと、長時間露光後の書き込みに時間がかかり、次のシャッターが切れない「ビジー状態」になることがあります。特にRAW撮影では1枚あたり30MB〜50MBのデータ量になるため、UHS-II対応のSDカードを使うのが安心です。UHS-I対応カードでは書き込みが追いつかず、撮影テンポが崩れることがあります。
花火・光跡|バルブ撮影の基本設定
花火撮影では「バルブモード(B)」を使い、シャッターボタンを押している間ずつシャッターが開き続ける設定にします。花火の打ち上がりから広がりきるまでをカバーするため、2秒〜8秒程度の露光が基本です。絞りはF8〜F11、ISO感度は100〜200に設定します。
必須機材は三脚とリモートレリーズ(またはリモコン)です。バルブモードではシャッターボタンを手で押し続ける必要があるため、リモートレリーズがないと必ず手ブレします。ケーブルレリーズは1,000円〜3,000円程度で購入でき、Bluetooth対応のワイヤレスレリーズもあります。
花火撮影で意外と重要なのがピント合わせです。暗い空ではAFが合いにくいため、花火が始まる前に遠くの建物や街灯にAFでピントを合わせてからMF(マニュアルフォーカス)に切り替え、ピントリングに触れないようにテープで固定するのが定番の方法です。
室内撮影で写真がチカチカする?フリッカーの原因と対策
フリッカーが起きるメカニズム|電源周波数との関係
蛍光灯やLED照明の下で撮影したとき、写真ごとに明るさがバラバラになったり、画面に横縞が入ったりすることがあります。これが「フリッカー」と呼ばれる現象です。原因は、照明が電源周波数に合わせて目に見えない速さで明滅しているためです。
日本では東日本が50Hz(1秒間に100回明滅)、西日本が60Hz(1秒間に120回明滅)です。シャッタースピードがこの明滅の周期と合わないと、明るいタイミングで切れた写真と暗いタイミングで切れた写真が混在します。
実はLED照明はフリッカーが出やすい傾向があります。蛍光灯よりも明滅の波が大きいLED製品が多く、特に安価なLEDシーリングライトの下では、高速シャッターでフリッカーが顕著に出ることがあります。自然光が入る窓際で撮影する、または撮影用の高品質LEDライト(フリッカーフリー対応)を使うことで回避できます。
フリッカーを防ぐシャッタースピードの選び方
フリッカーを防ぐ最もシンプルな方法は、電源周波数の整数倍に合ったシャッタースピードを使うことです。東日本(50Hz)なら1/100秒の整数倍(1/100秒、1/50秒、1/25秒など)、西日本(60Hz)なら1/120秒の整数倍(1/120秒、1/60秒、1/30秒など)を選びます。
ただし、これだけではスポーツ撮影など高速シャッターが必要な場面で困ります。1/500秒や1/1000秒はどちらの周波数の整数倍にもなりません。この場合は、カメラの「アンチフリッカー」機能を使いましょう。照明の明滅を検知し、最も明るいタイミングでシャッターを切ってくれる機能で、ニコン・ソニー・キヤノンの中級機以上に搭載されています。
注意点として、アンチフリッカー機能を使うと連写速度がわずかに低下することがあります。明滅のタイミングに合わせてシャッターを切るため、本来の連写間隔より若干遅れが生じるためです。連写速度が最優先の場面ではアンチフリッカーをオフにし、多少の明るさムラは後処理で修正するという割り切りも必要です。
【フリッカー】照明の明滅がシャッタースピードと干渉して起きる明暗のムラ。連写時に写真ごとの明るさがバラつく。
【アンチフリッカー】照明の明滅を検知し、最も明るいタイミングに合わせてシャッターを切る機能。
体育館・イベント会場で失敗しないための3つの設定
体育館やイベント会場は照明環境が悪く、フリッカーと光量不足が同時に起きやすい場面です。まず、シャッタースピードを1/250秒に固定し、ISO感度オート(上限ISO6400〜12800)、絞りは開放〜1段絞りに設定します。
次に、アンチフリッカー機能をオンにします。これだけで照明のチカチカはかなり軽減されます。さらに、ホワイトバランスを「蛍光灯」または「オート(雰囲気優先)」に設定しておくと、色かぶりも抑えられます。
それでも暗い場合は、シャッタースピードを1/125秒まで落とすか、F1.4〜F1.8の明るい単焦点レンズに交換する方法があります。ズームの利便性は失いますが、2〜3段分の光量差は大きく、画質への影響を最小限に抑えられます。35mm単焦点ならスナップ的に、50mm〜85mm単焦点ならステージ撮影に向いています。
電子シャッターとメカシャッターの違い|高速撮影の落とし穴
メカシャッターの仕組みと限界速度
メカニカルシャッター(メカシャッター)は、物理的な幕がセンサーの前を走って露光をコントロールする方式です。先幕が開いてセンサーに光が当たり、後幕が閉じて露光を終了します。この2枚の幕の間隔(スリット幅)が狭いほど速いシャッタースピードになります。
メカシャッターの最高速度は機種によって異なりますが、エントリー機で1/4000秒、中級機以上で1/8000秒が一般的です。物理的な幕を高速で動かす機構のため、シャッター音が発生し、微振動(シャッターショック)も起きます。
メカシャッターのメリットは「歪みが出ない」ことです。センサー全面をほぼ同時に露光するため、動きの速い被写体でも形が歪むことがありません。また、ストロボ同調速度もメカシャッターのほうが速く、多くの機種で1/200秒〜1/250秒まで対応しています。
電子シャッターなら1/32000秒も可能|ただしローリングシャッターに注意
電子シャッターは物理的な幕を使わず、センサーの電子的な読み出しでシャッタースピードを制御する方式です。最大の利点は超高速シャッターが可能なことで、1/16000秒〜1/32000秒に対応する機種もあります。完全無音で撮影でき、シャッターショックもゼロです。
ただし、電子シャッターにはローリングシャッター歪み(ゼリー現象)というデメリットがあります。センサーの上から下に向かって順番に読み出すため、高速で動く被写体が斜めに歪んだり、カメラを素早く振ると垂直の建物が傾いたりします。
ローリングシャッター歪みが気になるのは、高速で横切る電車や車、ゴルフのスイングなど「被写体の動きが速い+横方向の動き」のケースです。風景やポートレートなど被写体があまり動かない場面では、電子シャッターで問題が出ることはほぼありません。最近のグローバルシャッター搭載機(ソニー α9 IIIなど)では歪みが解消されていますが、まだ高価格帯に限られています。
| 項目 | メカシャッター | 電子シャッター |
|---|---|---|
| 最高速度 | 1/4000秒〜1/8000秒 | 1/16000秒〜1/32000秒 |
| シャッター音 | あり | なし(無音) |
| ローリング歪み | なし | あり(高速動体で発生) |
| ストロボ同調 | 1/200秒〜1/250秒 | 制限あり(機種による) |
| シャッター耐久 | 10万〜50万回 | 物理的消耗なし |
| フリッカー | 出にくい | 出やすい(LED照明下) |
使い分けのベストプラクティス|オート切替が便利
結論として、メカシャッターと電子シャッターは場面に応じて使い分けるのがベストです。動体撮影やストロボ使用時はメカシャッター、静かに撮りたい場面や超高速シャッターが必要な場面は電子シャッターが適しています。
多くのミラーレスカメラには「オート」設定があり、状況に応じてメカシャッターと電子シャッターを自動で切り替えてくれます。普段はオートで運用し、動体撮影で歪みが気になるときだけメカシャッターに固定するのが実用的です。
なお、電子シャッターではストロボ(フラッシュ)が使えない、または同調速度に制限がかかる機種が多いです。ストロボ撮影では必ずメカシャッターに切り替えるか、カメラの仕様を確認してください。電子シャッターでストロボを使うと、画面の一部しか光が当たらない「幕切れ」が起きることがあります。
まとめ|シャッタースピードは「止める」と「流す」の使い分けがすべて
シャッタースピードは、カメラの基本設定のなかでも写真の見た目を最も直感的に変える要素です。速くすれば動きが止まり、遅くすれば動きが流れる。このシンプルな原理を被写体ごとに使い分けられるようになれば、撮れる写真の幅が一気に広がります。
この記事のポイントをおさらいしましょう。
- シャッタースピードは「シャッターが開いている時間」。速いほどブレが止まり暗くなる、遅いほど動きが流れ明るくなる
- 手ブレ防止の目安は「1/焦点距離」秒。50mmレンズなら1/50秒、200mmレンズなら1/200秒が下限
- APS-C機は焦点距離を1.5倍(キヤノンは1.6倍)に換算して計算する
- 風景は1/125秒〜1/500秒、人物は1/60秒〜1/125秒、スポーツは1/500秒〜1/2000秒が目安
- 流し撮りは1/60秒〜1/125秒。腰の回転でカメラを追従させ、フォロースルーを意識する
- 室内撮影のフリッカーは、東日本50Hzなら1/100秒の整数倍、西日本60Hzなら1/120秒の整数倍で防げる
- 電子シャッターは高速・無音だが、ローリングシャッター歪みとストロボ制限に注意する
まずは「シャッタースピード優先モード(S/Tv)」で撮影してみてください。被写体に合ったシャッタースピードを選ぶだけで、絞りとISO感度はカメラが自動で合わせてくれます。日常スナップなら1/250秒、動く被写体なら1/500秒からスタートして、結果を見ながら調整すればOKです。慣れてきたら、スローシャッターで水の流れや夜景の光跡にも挑戦してみると、写真表現の楽しさがさらに広がります。
※製品のスペック・価格は時期や販売店によって異なる場合があります。最新情報は各メーカー公式サイトでご確認ください。

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