「ND8って何段減るの?」「滝を撮るのにND64で足りる?」――NDフィルターを使い始めると、数字と段数とシャッタースピードの関係でつまずく人がとても多いポイントです。ND2、ND8、ND400、ND1000…数字はバラバラなのに、規則性が見えにくいからです。
結論から言うと、NDフィルターは「早見表」を1枚頭に入れておくだけで、撮影現場での露出計算が一気にラクになります。数字の正体は「光量を何分の1にするか」、そしてそれが「何段(何絞り)分か」「シャッタースピードが何倍になるか」――この3つの対応さえ押さえれば、もう迷いません。
この記事では、ND2〜ND1000までの段数・露出倍数・濃度を1枚にまとめた早見表を中心に、シャッタースピードの換算方法、撮りたい写真からのND選び、固定式と可変式の違い、現行の主要フィルターのスペックと価格(2026年6月時点)まで、現場でそのまま使える形で解説します。
・ND番号・段数・露出倍数・濃度を1枚で見られる完全早見表
・「元のSS × ND番号」だけで済むシャッタースピードの計算方法
・滝・海・動画など撮りたい写真から逆算するND段数の選び方
・固定式ND8と可変ND(NiSi・K&F・ケンコー・マルミ)のスペックと実勢価格
NDフィルターの早見表とは?数字の意味を3分で理解する

NDフィルターの早見表とは、ND2・ND8・ND1000といった「ND番号」と、それが写真の露出にどう効くか(段数・露出倍数・シャッタースピードの変化)を一覧にしたものです。まずは番号の読み方から押さえると、表全体がスッと頭に入ります。
ND8の「8」は光量1/8|数字が大きいほど暗くなる
ND番号の数字は「光量を何分の1に減らすか」を表します。ND8なら光量を1/8に、ND1000なら約1/1000に減らすという意味です。つまり数字が大きいほど暗く写り、より長いシャッタースピードが使えるようになります。ND2は1/2、ND4は1/4、ND16は1/16――と、番号がそのまま分母になると覚えると簡単です。日中の明るい屋外でシャッタースピードを遅くしたい、あるいは絞りを開けたい場面で、この「光を間引く」役割が効いてきます。注意点として、ND番号は「光量の比率」であって段数そのものではありません。ここを混同すると計算がずれるので、次のH3で整理します。
段数(絞り段数)=露出を2倍・1/2倍する単位のこと。「1段明るく」は光量2倍、「1段暗く」は光量1/2を指します。NDフィルターの「ND8=3段減光」は、光量を1/8(=1/2を3回)にする、という意味です。
「段数」と「露出倍数」の違いを混同しない
NDフィルターを語るとき、「段数」と「露出倍数(露出倍率)」の2つの言葉が出てきます。露出倍数はND番号と同じ値で、ND8なら「8倍」、つまりシャッタースピードを8倍長くできるという意味です。一方の段数は、その露出倍数を「2の何乗か」で言い換えたもので、ND8は2の3乗=8なので「3段」になります。光量を1/2にするごとに1段なので、ND2=1段、ND4=2段、ND8=3段、ND16=4段と、番号が倍になるたびに段数が1ずつ増えます。撮影現場では「段数」で考えるとシャッタースピードの計算が速く、製品スペックでは「ND番号(露出倍数)」で書かれることが多い、という使い分けを知っておくと混乱しません。
早見表が必要な理由|ND1000は暗すぎてその場で測れない
「カメラが自動で測光してくれるなら早見表はいらないのでは?」と思うかもしれませんが、濃いNDでは話が変わります。ND1000(10段)のような強力なフィルターを付けると、ファインダーやライブビューが真っ暗になり、カメラの測光やオートフォーカスがまともに動かなくなります。そのため、フィルターを付ける前に適正露出を測り、早見表で「ND装着後は何秒か」を計算してマニュアルで設定する、という手順が必要になります。たとえばフィルターなしで1/60秒だった場面にND1000を足すと、1/60×1000=約16秒。これは暗算では出しにくく、早見表があると一瞬です。逆に薄いND(ND8程度)なら測光が効くので、早見表は確認用として使えば十分です。
NDフィルター早見表【段数・露出倍数・濃度の完全対応版】
ここがこの記事の核心です。ND番号・段数・露出倍数・濃度表記を1枚にまとめました。スマホのスクリーンショットで保存しておくと、現場でそのまま使えます。
| ND番号 | 段数 | 露出倍数 | 光量 | 濃度(D) |
|---|---|---|---|---|
| ND2 | 1段 | 2倍 | 1/2 | 0.3 |
| ND4 | 2段 | 4倍 | 1/4 | 0.6 |
| ND8 | 3段 | 8倍 | 1/8 | 0.9 |
| ND16 | 4段 | 16倍 | 1/16 | 1.2 |
| ND32 | 5段 | 32倍 | 1/32 | 1.5 |
| ND64 | 6段 | 64倍 | 1/64 | 1.8 |
| ND400 | 約8.6段 | 400倍 | 1/400 | 2.6 |
| ND500 | 約9段 | 500倍 | 1/500 | 2.7 |
| ND1000 | 10段 | 1000倍 | 1/1000 | 3.0 |
ND2〜ND1000の段数早見表|倍になるたび1段増える
上の表でいちばん大事な規則は「ND番号が2倍になると段数が1段増える」ことです。ND2(1段)→ND4(2段)→ND8(3段)→ND16(4段)→ND32(5段)→ND64(6段)と、きれいに1段ずつ積み上がります。この6段までは番号と段数が暗算でつながるので、早見表を見なくても対応できる人が多い範囲です。問題はここから先で、ND400やND1000のように「2倍ずつ」ではない番号が混ざってくると、とたんに段数が分かりにくくなります。だからこそ早見表が活きます。なお濃度(D)は対数表記で、0.3刻みがちょうど1段に相当します。NiSiなど一部のフィルターは「ND0.9」のように濃度で表記されることがあり、0.9=3段=ND8と読み替えられます。表記が違っても中身は同じ、と理解しておくと製品選びで迷いません。
ND400・ND500は何段?中途半端な数字の読み解き方
ND400やND500は「2の累乗」ではないため、段数がきれいな整数になりません。計算上はND400がlog₂(400)≒8.6段、ND500がlog₂(500)≒9段です。ND400はND256(8段)とND512(9段)のちょうど中間あたり、と覚えると感覚がつかめます。実用上はND400を「約8段強」、ND500を「約9段」として扱えば、シャッタースピードの計算でほぼズレません。なぜこんな半端な番号が存在するかというと、フィルムカメラ時代からの製品ラインや、メーカーごとの製造都合が背景にあります。撮影時は神経質に小数点まで合わせる必要はなく、撮影後にヒストグラムを見て微調整すれば十分です。
濃度表記(0.3/0.6/0.9)とND番号の対応を覚える
角型フィルターや海外ブランドでは、ND番号ではなく「ND0.9」「ND3.0」のような濃度(光学濃度D)で書かれることがあります。これは10を底とした対数表記で、D=0.3ごとに1段の減光に相当します。つまりND0.3=1段=ND2、ND0.9=3段=ND8、ND3.0=10段=ND1000という対応です。LEE、NiSiの角型システム、Lightroom系の現像ソフトでも濃度表記が登場するため、「0.3刻み=1段刻み」の換算は覚えておくと得をします。注意点は、メーカーによってND番号と濃度表記の対応が微妙に違うケースがあること。たとえば一部メーカーは「ND64=1.8」を「ND1.8」と略すので、購入前に段数(○段)で確認するのが確実です。数字の見た目に惑わされず、必ず「何段か」に変換して比較しましょう。
シャッタースピードはこう変わる|計算式と早見表で一発換算

NDフィルターを付けると、同じ明るさで撮るためにシャッタースピードを遅くする必要があります。ここでは現場で迷わない計算式と、ND別の換算早見表を用意しました。
計算式は「元のSS × ND番号」だけ
シャッタースピードの計算式はシンプルで、「フィルターなしの適正シャッタースピード × ND番号 = 装着後のシャッタースピード」だけです。たとえばフィルターなしで1/250秒が適正なら、ND8(8倍)を付けると1/250×8=1/30秒。ND64(64倍)なら1/250×64=約1/4秒になります。段数で考える派なら「1段で2倍」を使い、ND8は3段だからSSを3段分(2倍×3回=8倍)遅く、と数えても同じ答えにたどり着きます。どちらか計算しやすいほうで構いません。ポイントは、必ず「フィルターを付ける前の適正露出」を起点にすること。ここを測り間違えると、いくら計算式が合っていても結果がずれます。
| ND番号 | 段数 | 装着後のSS | 向く被写体 |
|---|---|---|---|
| ND8 | 3段 | 約1/8秒 | 小さな滝・流し撮り |
| ND16 | 4段 | 約1/4秒 | 渓流・水の流れ |
| ND64 | 6段 | 約1秒 | 滝を絹のように |
| ND400 | 約8.6段 | 約6〜7秒 | 雲・人混みを消す |
| ND1000 | 10段 | 約16秒 | 海・空の長秒露光 |
適正露出の出し方|まずフィルターなしで測る
正確な計算の出発点は「フィルターなしの適正露出」です。カメラをマニュアル(M)モードにし、絞りとISO感度を撮影意図に合わせて固定します(風景ならF8〜F11、ISO100が定番)。その状態でシャッタースピードを調整し、露出インジケーターが±0になるSSを確認します。これが「元のSS」です。あとは早見表どおりにND番号を掛ければ装着後のSSが出ます。ND8〜ND16程度の薄いNDなら、付けたままでも測光が効くので、Mのまま露出計を見て微調整しても構いません。逆にND400以上では測光が不安定になるため、必ず「外して測る→計算→付けて設定」の順を守ること。三脚は必須で、長秒になるほどわずかな振動が描写を甘くします。撮影前にシャッタースピードの基本を押さえておくと、この工程がスムーズです。

「シャッタースピードって、結局どのくらいに設定すればいいの?」カメラを買ったばかりの方が最初にぶつかる壁がここです。シャッタースピードは写真の「ブレ」と「明るさ…
失敗パターン|SSが速すぎて減光効果がゼロになる
NDフィルター初心者がやりがちなのが、「フィルターを付けたのに水が止まって写る」失敗です。原因は、シャッタースピードがまだ速すぎること。ND8(3段)を付けても、元が1/2000秒のような明るい設定だと装着後は1/250秒で、滝を流すには全然足りません。対策は2つ。①絞りをF11〜F16まで絞る、②ISOを最低感度(ISO100や64)まで下げる――この2つでベースのSSを遅くしてから、必要な段数のNDを足します。それでも1秒に届かないなら、ND64やND1000など濃いフィルターに替える判断が必要です。「フィルターを付けた=必ず流れる」ではなく、最終的なシャッタースピードが目標(滝なら0.5〜2秒)に入っているかを撮影後に必ず確認しましょう。
何段のNDを選べばいい?撮りたい写真から逆算する
早見表で換算ができるようになったら、次は「自分の撮りたい写真にはどの段数が要るか」です。被写体ごとに目安となるシャッタースピードがあるので、そこから逆算すると失敗しません。
滝・渓流は1〜数秒|ND8〜ND64が基準
滝や渓流を「絹のように」滑らかに写したいなら、目標シャッタースピードは0.5〜2秒前後です。日中の森の中は意外と暗く、F11・ISO100で測ると1/15〜1/4秒くらいになることが多いため、ここから2〜4段足すND8〜ND64が基準になります。明るく開けた渓谷ならND64(6段)、木陰の暗い沢ならND8〜ND16でも届きます。注意点は「流しすぎ」で、長くしすぎると水が真っ白なモヤになり立体感が消えます。0.5〜1秒で水の筋を残すか、2秒以上で完全に滑らかにするか、撮りたい質感で段数を選びましょう。複数段を1枚でカバーできる可変NDなら、現場で微調整しやすく便利です。
海・雲を流すなら30秒以上|ND1000の出番
波を霧のように消したり、雲を線状に流したりする「超」長秒露光では、30秒〜数分のシャッタースピードが必要です。これには10段減光のND1000が定番。日中F11・ISO100で1/30秒だった場面にND1000を足すと1/30×1000=約33秒になり、波が真っ平らな霧状に変わります。さらに伸ばしたいときはND1000とND8を重ねて13段(約4分超)にする手もあります。注意したいのは、超長秒では「相反則不軌」を心配する人がいますが、これはフィルム特有の現象でデジタルカメラでは原則発生しません。ただしデジタルでも長秒ではセンサー発熱でノイズ(ホットピクセル)が出るため、カメラの「長秒時ノイズリダクション」をONにするのが正解です。長秒露光の被写体別の目安は専用記事で詳しく解説しています。

「シャッタースピードを遅くすると、水が絹のように流れる写真が撮れるらしい」——そんな話を聞いて、長秒露光に興味を持った方は多いのではないでしょうか。滝や渓流を白…
動画・日中ポートレートは「わずかな減光」が効く
動画では「シャッタースピードはフレームレートの約2倍」が自然なモーションブラーの基準です。30fpsなら1/60秒に固定したいのに、日中屋外だと明るすぎて白飛びします。そこで2〜5段のNDを足し、1/60秒を保ったまま露出を合わせます。日中ポートレートも同じで、F1.4の大口径レンズを開放で使いたいのに、明るすぎてSSが上限(1/4000や1/8000)を超える――そんなときND8〜ND16を足せば、ボケを生かしたまま適正露出にできます。これらは「水を流す」用途と違い、こまめに濃度を変えたいので、後述の可変NDが活躍する領域です。注意点として、強すぎるND(ND400以上)を動画に使うと暗所AFが迷いやすくなるため、必要最小限の段数にとどめましょう。
逆張り|実は「ND64が1枚」で大半の風景はまかなえる
「ND8もND16もND1000も全部そろえないと」と考えがちですが、実はリスクを抑えて始めるなら、最初の1枚はND64(6段)がもっとも汎用的です。理由は、滝・渓流(0.5〜2秒)という風景撮影で最も需要の高いシャッタースピードに、F11・ISO100の標準設定からちょうど届くから。ND8では足りず、ND1000では暗すぎる「ちょうど中間」が、撮影機会の多い領域なのです。海の超長秒をやりたくなったらND1000を買い足す、動画もやるなら可変NDに乗り換える――という順で増やせば、無駄な出費を抑えられます。最初から何枚も買うより、ND64を1枚使い倒してから不足を感じた方向に投資するのが、結果的にいちばん効率的です。
固定式と可変式どっちが早い?早見表いらずの選択肢
ここまで早見表で段数を計算してきましたが、実は「計算をほぼ不要にする」選択肢もあります。固定式と可変式、それぞれの強みと弱みを正直に比較します。
固定NDは色が正確・1枚1段数で迷わない
固定NDは、ND8ならND8、ND1000ならND1000と、段数が決まった1枚もの。メリットは色再現の正確さと安さで、ケンコーのPRO1D プロND8(W) Nは49mmで税込5,060円〜と手が届きます。可変NDのような色かぶりやムラの心配が少なく、画質を最優先するなら固定式が安心です。デメリットは、段数を変えるたびにフィルターを付け替える手間と、複数段そろえると枚数ぶん費用がかさむこと。ND8・ND64・ND1000の3枚をそろえると、合計で1万5千円〜2万円を超えることもあります。風景中心で「使う段数が決まっている」人、画質に妥協したくない人に向く選択肢です。
可変NDは1枚でND2〜ND32|早見表を見なくていい
可変ND(バリアブルND)は、フィルターの枠を回すだけで減光量を無段階に変えられるタイプです。NiSiの可変ND TRUE COLOR ND VARIO 1-5stopsはND2〜ND32(1〜5段)を1枚でカバーし、価格は全サイズ共通で税込15,730円。ファインダーを見ながら「ちょうどいい暗さ」に合わせられるので、早見表で段数を計算する手間そのものが減ります。動画や日中ポートレートのように、こまめに濃度を変えたい用途では決定的に便利です。デメリットは、可変式特有の色かぶりやムラが出やすいこと。安価な製品ほど顕著で、画質では同価格帯の固定NDに一歩譲ります。とはいえNiSiのTrue ColorやK&FのXムラ制御のように、弱点を抑えた現行モデルも増えています。NDフィルターの種類ごとの使い分けは選び方の記事も参考にしてください。

「日中に滝をシルクのように撮りたい」「明るい屋外でF1.4の開放ボケを使いたい」——こうした撮影は、カメラの設定だけでは実現できません。光が多すぎてシャッタース…
| 製品 | タイプ | 段数 | 実勢価格(税込) |
|---|---|---|---|
| ケンコー PRO1D プロND8(W) N | 固定ND8 | 3段 | 49mm 約5,060円〜82mm 約13,200円 |
| マルミ DHG ND8 | 固定ND8 | 3段 | 67mm 約6,000〜7,000円 |
| NiSi TRUE COLOR ND VARIO 1-5stops | 可変ND2-32 | 1〜5段 | 全サイズ共通 約15,730円 |
| K&F Concept NANO-X バリアブル ND2-ND32 | 可変ND2-32 | 1〜5段 | 62mm 約6,320円〜 |
価格と画質のバランスで選ぶ|可変NDの値段差の理由
可変NDはK&F Conceptの約6,320円(62mm)からNiSiの15,730円まで、同じ「ND2〜32」でも倍以上の価格差があります。この差は主にコーティングと色再現の精度に出ます。NiSiのTrue Colorテクノロジーは可変NDの弱点だった黄色かぶりを抑え、ストッパーでX状ムラの発生も防ぐ設計。K&FのNANO-Xも「Xムラ制御機能」とMRCコーティングを備え、入門価格帯としては健闘しています。選ぶ基準はシンプルで、色や均一性を重視する風景・作品撮りならNiSiクラス、まず可変NDを試したい・予算優先ならK&Fクラス、という分け方が現実的です。固定ND8だけならケンコーやマルミが5,000円台から。用途と予算の交点で1枚を選びましょう。
失敗パターン|安い可変NDで「X状のムラ」が出る
もう一つの典型的な失敗が、可変NDを最大付近まで回したときに画面に黒い「X字状のムラ(クロスムラ)」が出る現象です。これは可変NDの構造上、減光を強くするほど起きやすく、特に広角レンズと安価な製品の組み合わせで顕著になります。対策は3つ。①減光を効かせすぎず、表示範囲(1〜5段など)の中ほどまでで使う、②X状ムラの発生を抑えるストッパー付きモデル(NiSi VARIOなど)やXムラ制御機能(K&F NANO-X)を選ぶ、③ムラが出る超長秒では固定NDに切り替える。可変NDは便利ですが万能ではないので、「広角+最大減光」という条件では固定NDのほうが安全、と覚えておくと作品を無駄にしません。
早見表を使うときに見落としがちな注意点
段数の計算が合っていても、フィルター径や重ね付け、長秒のノイズで失敗することがあります。現場で慌てないためのチェックポイントをまとめます。
フィルター径の確認|買う前にレンズの「Ø」を見る
NDフィルターはレンズのフィルター径に合うものを選ぶ必要があります。径はレンズ前面やキャップに「Ø67」「⌀77」のように刻印されています。早見表で段数を決めても、径が合わなければ装着できません。複数のレンズで使い回したいなら、いちばん大きい径に合わせて買い、小さいレンズには「ステップアップリング」を介して装着する方法が経済的です。たとえば77mmのフィルター1枚を、67mm→77mmのリングで67mmレンズにも使えます。注意点は、ステップアップリングを使うと純正レンズキャップが付かなくなること、そして広角レンズでは厚みのある枠でケラレ(四隅が暗くなる現象)が出る場合があること。薄枠設計のフィルターを選ぶと、このリスクを下げられます。
重ね付けは掛け算|でもケラレに注意
NDフィルターは重ねて使え、その効果は掛け算で計算します。ND4とND8を重ねるとND4×ND8=ND32(5段)、ND8とND1000を重ねるとND8000相当(13段)です。手持ちのフィルターで段数を稼ぎたいときに便利なテクニックですが、注意点もあります。フィルターを2枚3枚と重ねると物理的な厚みが増し、広角レンズでは四隅が黒く欠けるケラレが発生しやすくなります。また枚数ぶん反射面が増えるため、逆光ではゴーストやフレアのリスクも上がります。重ねるなら2枚までを基本にし、できれば薄枠やマグネット式など重ね付けを前提とした設計のものを選ぶと安心です。1枚で済むなら1枚で済ませるのが、画質的にはいちばん有利です。
ND1000などで数十秒以上の長秒露光をすると、センサー発熱で暗部に赤紫のノイズ(ホットピクセル)が出ることがあります。フィルム特有の「相反則不軌」はデジタルでは起きませんが、このノイズ対策としてカメラの「長秒時ノイズリダクション」をONにしておきましょう。撮影後に同じ時間ぶん処理が走るため、撮影テンポは落ちますが画質は安定します。
露出はヒストグラムで最終確認する
早見表で計算したシャッタースピードは、あくまで「理論上の適正値」です。実際には空の明るさや反射、フィルターの個体差で多少ずれることがあります。だからこそ、撮影後は背面モニターの明るさだけで判断せず、ヒストグラムで確認するのが確実です。山が右端に張り付いていれば白飛び、左に寄りすぎていれば露出不足。長秒露光では特に空が飛びやすいので、ヒストグラムを見て1/3〜2/3段ずつシャッタースピードや絞りを微調整します。NDを付けると測光が不安定になりがちな分、この「撮って確認、直して撮る」のサイクルが効きます。RAWで撮っておけば、後からの露出補正の余地も広がるので、長秒露光ではRAW記録を推奨します。
シーン別・予算別のND早見ガイド
最後に、被写体と予算から逆引きできるガイドをまとめます。「結局どれを買えばいいか」で迷ったら、ここを見れば方向性が決まります。
被写体別おすすめ段数|迷ったらここから
被写体ごとに必要な段数の目安は、ある程度決まっています。風景の滝・渓流ならND8〜ND64(3〜6段)、海や雲を流す超長秒ならND1000(10段)、動画や日中ポートレートで開放を使いたいならND8〜ND16(3〜4段)が基準です。複数のシーンを撮るなら、固定ND64を1枚軸にしつつ、動画もやるなら可変NDを足す構成が無駄になりません。下の表を出発点に、自分のよく撮る被写体から逆算してください。
| 撮りたい写真 | 目安SS | おすすめ段数 |
|---|---|---|
| 滝・渓流を滑らかに | 0.5〜2秒 | ND8〜ND64(3〜6段) |
| 海・雲を流す超長秒 | 30秒〜数分 | ND1000(10段) |
| 日中ポートレート開放 | 1/200〜1/2000秒 | ND8〜ND16(3〜4段) |
| 動画(30fps) | 1/60秒固定 | 可変ND(1〜5段) |
予算別の選び方|5,000円台から始められる
予算からの逆引きも整理します。〜6,000円なら、固定のケンコー PRO1D プロND8(W) N(49mmで約5,060円)やマルミ DHG ND8(67mmで約6,000円台)が候補。まず1枚で減光を体験したい人向けです。6,000〜8,000円なら、K&F Concept NANO-X バリアブル ND2-ND32(62mmで約6,320円〜)で可変NDに踏み出せます。動画やポートレートでこまめに濃度を変えたい人に向きます。1万5千円前後の予算が取れるなら、色再現とムラ対策に優れたNiSi TRUE COLOR ND VARIO 1-5stops(約15,730円)が安心。作品づくりまで見据えるならこのクラスが満足度は高めです。最初の1枚は無理せず、使い込んで不足を感じてから上位や買い足しに進むのが、結局いちばん損のない買い方です。
よくある質問|可変NDと固定ND、どっちが先?
「最初の1枚は固定と可変どちらがいいか」という質問が多いです。風景(滝・海)中心で画質最優先なら固定ND64または固定ND1000、動画やポートレートも撮るなら可変NDが先、というのが基本方針です。可変NDは早見表での計算がほぼ不要になり、ファインダーを見ながら好みの暗さに合わせられるのが最大の利点。一方で広角+最大減光ではX状ムラのリスクがあるため、風景で隅々まで均一な画質が欲しい場面では固定NDが安心です。もう一つ多いのが「PLフィルターと併用できるか」。可能ですが、フィルターを重ねるぶんケラレやフレアのリスクは上がります。NiSiやK&Fのマグネット式システムなら着脱がスムーズで、併用時のストレスを減らせます。
まとめ|NDフィルターは早見表1枚で迷わなくなる
NDフィルターは、数字の意味さえ分かれば難しくありません。ND番号は「光量を何分の1にするか」、それを2の累乗で言い換えたものが「段数」、そして「元のシャッタースピード × ND番号」で装着後のSSが一発で出ます。この3つの関係を早見表1枚で押さえておけば、撮影現場で迷う時間がぐっと減ります。あとは撮りたい写真から必要な段数を逆算し、固定式か可変式かを用途と予算で選ぶだけです。
この記事の要点を整理します。
- ND番号が2倍になると段数は1段増える(ND8=3段、ND64=6段、ND1000=10段)
- シャッタースピードは「元のSS × ND番号」で計算できる(例:1/60秒×ND1000=約16秒)
- ND400は約8.6段、ND500は約9段と、半端な番号は近い段数で扱えばOK
- 滝・渓流はND8〜ND64、海の超長秒はND1000、動画・ポートレートはND8〜ND16が基準
- 固定NDは色が正確で安い(ケンコーND8は約5,060円〜)、可変NDは計算不要で便利(NiSiは約15,730円)
- 可変NDは広角+最大減光でX状ムラが出やすい。重ね付けは2枚までが安全
- 長秒露光ではホットピクセル対策に「長秒時ノイズリダクション」をON
最初の1枚で迷ったら、汎用性の高いND64(6段)か、計算がいらない可変NDから始めるのがおすすめです。まずは手持ちのレンズのフィルター径を確認し、よく撮る被写体に合う段数を1枚そろえて、滝や雲が流れる長秒露光の世界を体験してみてください。早見表をスマホに保存しておけば、現場で慌てることはもうありません。
※価格・スペックは2026年6月時点の情報です。最新の価格や仕様は各メーカー公式サイト(ケンコー・トキナー、NiSi)でご確認ください。

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