「日中に滝をシルクのように撮りたい」「明るい屋外でF1.4の開放ボケを使いたい」——こうした撮影は、カメラの設定だけでは実現できません。光が多すぎてシャッタースピードを遅くできない、絞りを開けられない。その壁を一枚で突破してくれるのがNDフィルターです。
NDフィルターはレンズに入る光の量を物理的に減らすフィルターで、固定ND・可変ND・マグネット式の3タイプがあります。価格は約3,000円台から手に入り、写真でも動画でも表現の幅を大きく広げてくれるアクセサリーです。
この記事では、NDフィルターの仕組みから選び方、用途別のおすすめ製品まで、初心者が迷わず1枚目を選べるように解説します。
・NDフィルターの仕組みと3タイプ(固定・可変・マグネット式)の違い
・ND8〜ND1000の濃度ごとの用途と選び方
・写真撮影・動画撮影それぞれで活きるシーン
・予算3,000円〜12,000円のおすすめ4ブランド比較
NDフィルターとは「レンズにかけるサングラス」|光を減らして表現を広げる仕組み

NDフィルターの正体は「光の量だけを減らす」フィルター
NDフィルターのNDは「Neutral Density(中立濃度)」の略です。色味を変えずに光の量だけを均一に減らすのが最大の特徴で、サングラスが目に入る光を減らすのと同じ原理です。レンズの前面にねじ込んで装着し、フィルターのガラスが光を吸収・反射することで、センサーに届く光量をコントロールします。
NDフィルターを使う理由はシンプルで、「光が多すぎる場面で、遅いシャッタースピードや開放F値を使いたい」から。日中の屋外でシャッタースピード1秒にしたい場合、ISO100・F16に絞ってもまだ明るすぎる場面があります。ここでND64(6段減光)を装着すれば、光を1/64に減らしてスローシャッターが可能になります。
PLフィルター(偏光フィルター)と混同されがちですが、PLは反射を除去して色を鮮やかにするもの、NDは純粋に光量だけを落とすもの。目的が違うので、併用するケースもあります。
減光の「段数」とND番号の関係を覚えておこう
NDフィルターの番号は「光を何分の1にするか」を示しています。ND8なら光を1/8に、ND1000なら光を1/1000に減らします。写真の世界では「段」で表すことが多く、ND8=3段、ND16=4段、ND64=6段、ND1000=10段の減光に相当します。
1段の減光はシャッタースピードを1段遅くできることを意味します。たとえばND8(3段)を装着すると、1/500秒だった適正露出が1/60秒になる計算です。滝や渓流で1〜30秒の超スローシャッターを使いたいなら、ND64〜ND1000クラスが必要になります。
注意点として、NDフィルターを重ねづけすると減光量は掛け算になります。ND8×ND8=ND64(3段+3段=6段)。ただし重ねづけはケラレ(画面四隅が暗くなる現象)のリスクがあるため、広角レンズでは避けたほうが安全です。
・ND8=3段減光(光を1/8に):日中のポートレート開放撮影向き
・ND16=4段減光(光を1/16に):日中の動画撮影・滝の流し撮り向き
・ND64=6段減光(光を1/64に):渓流・海のスローシャッター向き
・ND1000=10段減光(光を1/1000に):日中の超長時間露光・人消し向き
NDフィルターを使うと写真にどんな効果が出るか
NDフィルターの効果は大きく2つ。1つ目は「スローシャッターによる動きの表現」です。滝が絹糸のように流れる写真、車のライトが線になる写真、雲が流れるように写る写真——いずれもNDフィルターによるスローシャッターの成果です。
2つ目は「明るい場所での開放F値の使用」です。晴天の屋外でF1.4やF1.8を使おうとすると、ISO100・シャッタースピード上限(1/4000〜1/8000秒)でも露出オーバーになることがあります。ND8〜ND16を装着すれば、3〜4段分の余裕が生まれ、日中でもボケを活かしたポートレートが可能です。
デメリットとして、NDフィルター装着中はファインダーやライブビューが暗くなるため、構図決定やピント合わせは装着前に済ませるのが基本ワークフローです。ND1000では肉眼ではほぼ真っ暗になるため、三脚と事前のフレーミングが必須になります。
固定ND・可変ND・マグネット式の3タイプ|それぞれの長所と短所を比較
固定NDフィルターは画質最優先の王道タイプ
固定NDフィルターは「ND8」「ND64」のように減光量が1種類に固定されたタイプです。構造がシンプルなぶん、光学性能が安定しやすく、色かぶりやムラが発生しにくいのが最大のメリット。風景撮影や長時間露光で「画質を妥協したくない」なら固定NDが第一選択になります。
ガラスにコーティングを施したモデルが主流で、Kenko PRO1D Lotusシリーズは撥水・撥油コーティングで屋外での使い勝手も良好です。67mm径で実勢価格 約4,000〜5,500円(2026年6月時点)と手が出しやすい価格帯です。
デメリットは、撮影条件に合わせて複数枚を持ち歩く必要がある点。ND8・ND64・ND1000の3枚を揃えると、フィルターケースが必要になり携帯性が落ちます。「今日の撮影に何段必要か」を事前に判断する知識も求められます。
可変NDフィルターは1枚で何役もこなす万能タイプ
可変NDフィルターは、2枚の偏光フィルターを重ねた構造で、前面リングを回すだけでND2〜ND400(1〜約9段)まで無段階に減光量を調整できます。1枚持っていれば固定ND数枚分の役割を果たし、フィルター交換の手間がなくなるのが最大の利点です。
動画撮影では光の変化にリアルタイムで対応する必要があるため、可変NDが事実上の標準装備。K&F Concept Nano-X 可変NDは67mm径で実勢価格 約3,000〜4,500円(2026年6月時点)と手頃で、YouTubeクリエイターの間で定番になっています。
最大のデメリットは「Xムラ」です。可変NDを暗い側(ND200〜ND400付近)に回しすぎると、画面上にX字型の影が現れることがあります。偏光フィルター2枚の干渉で起きる構造的な弱点なので、「使用可能範囲は最大減光の80%まで」と覚えておくのが安全です。また、広角レンズ(16mm以下)では周辺部に色ムラが出やすい傾向もあります。
マグネット式NDは「交換スピード重視」の新世代タイプ
マグネット式NDフィルターは、レンズに装着したアダプターリングに磁石でフィルターを脱着する方式です。ねじ込み式と違い、ワンタッチで1秒以内に交換できるのが最大の魅力。固定NDの画質安定性を保ちつつ、交換の手間を大幅に削減しています。
風景撮影で「ND64からND1000に変えたい」という場面や、動画撮影で「室内と屋外を行き来する」場面で真価を発揮します。KANIやNiSiがマグネット式システムを展開しており、アダプターリング+フィルター2〜3枚のセットで1万円前後から導入できます。
注意点として、マグネット式はメーカー独自規格のため、他社製品との互換性がありません。一度システムを選ぶと、そのブランドのフィルターで揃える必要があります。また、強い風や振動で外れるリスクがゼロではないため、三脚使用時の長時間露光では念のためロック機構付きモデルを選ぶと安心です。
| 項目 | 固定ND | 可変ND | マグネット式 |
|---|---|---|---|
| 画質安定性 | ◎ ムラなし | △ Xムラあり | ◎ ムラなし |
| 利便性 | △ 複数枚必要 | ◎ 1枚で対応 | ○ 素早い交換 |
| 価格帯(67mm) | 約4,000〜5,500円/枚 | 約3,000〜12,000円 | 約10,000円〜(セット) |
| 向いている人 | 風景・長時間露光 | 動画・ポートレート | フィルター頻繁交換 |
濃度の違いで写真はここまで変わる|ND8からND1000まで

ND8(3段減光)は「日中ポートレートの開放F値」に効く
ND8は光を1/8に減らし、シャッタースピードを3段遅くできるフィルターです。日中の屋外でF1.4〜F2.0の開放ボケを使いたいポートレート撮影で出番が多く、ISO100・1/8000秒でも露出オーバーになる場面を解消してくれます。
具体的には、晴天の屋外(EV15程度)でF1.4を使いたい場合、NDなしではISO100でもシャッタースピード1/16000秒が必要になりますが、多くのカメラの上限は1/4000〜1/8000秒。ND8を装着すればシャッタースピード1/2000〜1/1000秒で収まり、問題なく撮影できます。
注意点として、ND8は長時間露光には力不足です。日中に1秒以上のスローシャッターを使いたい場合は、ND64以上が必要になります。「開放F値を使うため」と「スローシャッターのため」で必要な濃度が全く違う点を押さえておきましょう。
ND16〜ND32(4〜5段減光)は「滝・渓流の軽い流し」と「動画撮影」の定番
ND16(4段)〜ND32(5段)は、写真と動画の両方でもっとも汎用性が高い濃度帯です。渓流や滝で水の流れを「糸状ではなく、ふんわり動きが出る」程度に表現するにはシャッタースピード1/4〜1秒程度が目安で、曇天〜薄曇りならND16で到達できます。
動画撮影では「180度ルール」を守るためにND16が定番です。24fpsで撮る場合のシャッタースピード目安は1/50秒ですが、晴天の屋外ではNDなしだとISO100・F8でようやく適正露出。F2.8で背景ボケを活かしたい場合、ND16があれば3段分の余裕が生まれます。
デメリットは「晴天の強い光には足りない」ケースがある点。快晴の滝撮影でシャッタースピード数秒を狙う場合、ND16では光量が落としきれずND64以上が必要になります。撮影場所の明るさと目標のシャッタースピードから逆算して選ぶことが重要です。
ND64(6段減光)は「渓流・海の定番」でバランス型
ND64は光を1/64にする6段減光フィルターで、風景写真家に「1枚だけ選ぶならND64」と言われるほどバランスの良い濃度です。晴天でも1〜4秒程度のスローシャッターが実現でき、滝の絹糸表現・波打ち際のミスト表現・雲の流れ表現すべてに対応します。
使用シーンの具体例として、晴天(EV14)でF8・ISO100の場合、NDなしの適正シャッタースピードは1/250秒。ND64を装着すると6段分遅くなり約1/4秒。さらに絞りをF11にすれば約1秒に到達します。三脚は必須ですが、特殊な計算をしなくても「数秒」の世界に入れるのがND64の強みです。
注意点として、ND64の6段減光ではファインダーがかなり暗くなります。AF(オートフォーカス)が迷いやすくなるため、NDフィルター装着前にピントを合わせてからMF(マニュアルフォーカス)に切り替える手順がおすすめです。
ND1000(10段減光)は「日中の超長時間露光」専用の特殊フィルター
ND1000は光を1/1000に減らす10段減光の強力なフィルターです。晴天の日中でも30秒〜数分間のシャッタースピードを実現でき、「海面がミルクのように平坦になる」「通行人が消える」「雲が筋状に流れる」といった非日常的な表現が可能になります。
計算例を示すと、晴天(EV14)でF8・ISO100の適正シャッタースピード1/250秒にND1000を装着すると、10段分遅くなり約4秒。さらにF16にすれば約16秒、ND1000に加えてND8を重ねれば約30秒以上に到達します。
デメリットは明確で、装着すると肉眼ではほぼ真っ暗になり、AFも機能しません。撮影手順は「三脚設置→構図決定→ピント合わせ→NDフィルター装着→リモートレリーズでバルブ撮影」と工程が増えます。日常的なスナップには向かず、風景撮影に特化した「表現のためのフィルター」と割り切るのが正解です。
ND1000を使う場合、三脚とリモートレリーズ(またはカメラのタイマー機能)がほぼ必須です。手持ちでは数秒〜数十秒の露光中にブレが発生するため、ND1000だけ購入しても三脚なしでは効果を活かせません。予算にはフィルター代+三脚代を含めて考えましょう。
写真撮影で活きる5つのシーン|滝・海・街中スナップ
滝・渓流を「絹のような流れ」にするスローシャッター撮影
NDフィルターでもっとも人気が高い使い方が、滝や渓流のスローシャッター撮影です。シャッタースピード1〜5秒で水の流れが白い糸のように写り、10秒以上になると水煙のようなミスト表現になります。結論として、晴天ならND64、曇天ならND16〜ND32がベストな選択です。
具体的な設定例として、晴天の渓流でISO100・F11の場合、NDなしでの適正シャッタースピードは約1/125秒。ND64(6段)を装着すると約1秒、ND1000(10段)なら約8秒になります。曇天ならND16でも1秒に到達できるため、天候に合わせたフィルター選択が重要です。
注意点として、三脚の脚を渓流の中に立てる場合は水流の振動がブレの原因になります。石の上や岸辺の安定した場所に設置し、レリーズタイマー(2秒セルフタイマーでも可)を使うことでシャープな仕上がりになります。
海岸の波を「霧のように」平坦にする長時間露光
海岸での長時間露光は、ND1000が本領を発揮するシーンです。30秒〜2分の露光で波の動きが平均化され、海面がミルクのように滑らかに写ります。岩礁と組み合わせると「動かない岩+流れる海」のコントラストが印象的な作品になります。
撮影のベストタイミングは日の出・日没の前後1時間(ゴールデンアワー)です。この時間帯なら光量が少ないため、ND64でも30秒以上のスローシャッターに到達しやすくなります。日中の快晴ではND1000でも15〜30秒程度が限界のケースもあるため、より長い露光にはND1000+ND8の重ねづけが必要です。
見落としがちな注意点として、長時間露光中にレンズの後端から光が入る「光漏れ」があります。ミラーレスカメラでは問題になりにくいですが、一眼レフではファインダーアイピースを塞ぐキャップが必要です。また、潮の満ち引きで三脚が不安定になるリスクもあるため、撮影場所の潮汐を事前確認しましょう。
日中の屋外で「開放F値のボケ」を手に入れるポートレート
85mm F1.4や50mm F1.2といった大口径レンズの開放ボケを日中屋外で使いたい場合、ND8〜ND16が解決策です。結論として、晴天ならND8で十分なケースがほとんどです。
計算根拠として、晴天(EV15)でF1.4・ISO100の場合、必要なシャッタースピードは1/32000秒。カメラの上限が1/8000秒なら約2段分オーバーするので、ND8(3段減光)で余裕をもってカバーできます。薄曇り(EV13)ならNDなしでも1/8000秒で収まるケースが多いため、ND8を1枚持っていれば晴天〜曇天を問わずポートレートの開放撮影が可能です。
動画ポートレートの場合は可変NDが有利です。屋外の木漏れ日エリアから日なたに移動するような場面では、リアルタイムで減光量を調整できる可変NDが撮り直しのリスクを減らします。
街中スナップで「通行人を消す」人消し撮影
観光地や街角で「建物だけ撮りたいのに人が入る」という悩みを解決するのが、ND1000を使った人消し撮影です。30秒以上の長時間露光で、動いている人は写真に写り込まなくなります(同じ場所に30秒以上留まらない限り)。
設定例として、曇天の市街地(EV12)でF8・ISO100の場合、NDなしでは1/60秒。ND1000を装着すると約16秒になり、歩行者はほぼ消えます。快晴の場合はさらに短くなるため、ND1000+ND8の重ねづけで30秒以上を確保するとより確実です。
実はこのテクニック、高価なND1000を買わなくても「インターバル撮影+比較明合成」で擬似的に再現できます。ただし後処理の手間を考えると、NDフィルター1枚で撮影時に完結するほうが圧倒的に効率的です。撮影中は三脚を人通りの邪魔にならない場所に設置し、周囲への配慮も忘れずに。
動画撮影に必須と言われる理由|180度ルールとシネマティックな映像
180度ルールとは「シャッタースピード=フレームレートの2倍」の原則
動画撮影における180度ルールとは、「シャッタースピードの分母をフレームレートの2倍にする」というシネマの基本原則です。24fpsなら1/50秒、30fpsなら1/60秒、60fpsなら1/125秒がそれぞれ目安になります。このルールに従うと、映画のような自然なモーションブラーが得られます。
問題は日中の屋外。ISO100・F2.8でも適正露出のシャッタースピードは1/1000〜1/2000秒になるのが一般的です。180度ルールの1/50秒にするには4〜5段分の光を落とす必要があり、ND16〜ND32が必要になります。
シャッタースピードが速すぎるとどうなるか。映像の動きが「パラパラ漫画」のようにカクカクし、不自然な印象になります。写真では高速シャッターで「ピタッと止まる」のが好まれますが、動画では適度なブラーがないと違和感が出る。ここが写真と動画の決定的な違いです。
可変NDが動画撮影の標準装備になっている理由
動画撮影で可変NDフィルターが事実上の標準装備とされているのは、「光が変化する場面で撮影を止めずに対応できる」からです。屋外ロケでは雲の出入りで露出が1〜2段変動しますが、可変NDならリングを回すだけでリアルタイムに露出を一定に保てます。
K&F Concept Nano-X 可変ND(ND2〜ND400)は67mm径で実勢価格 約3,000〜4,500円(2026年6月時点)。動画入門用として十分な性能で、Vlog・YouTube撮影で広く使われています。より色再現性を重視するならNiSi True Colorシリーズ(67mm 約8,000〜12,000円程度)が候補に上がります。
可変NDの注意点として、動画中にリングを回すと映像にフィルター操作の振動が乗る可能性があります。回す際はカメラをしっかりホールドするか、電子ジンバルに載せた状態で操作するのがベスト。また、広角レンズ(16mm未満)では可変NDのムラが目立ちやすいため、マットボックス+角型NDフィルターという選択肢も検討に値します。
Vlog・YouTube撮影で「ボケ感のある映像」を撮るための具体設定
YouTubeやVlogで「映画っぽい」映像を撮りたいなら、F2.8以下の浅い被写界深度が効果的です。ただし日中屋外でF2.8・1/50秒(24fps)にすると、ISO100でも3〜4段オーバーになるのが一般的。ここで可変ND(ND8〜ND32相当)を使えば、ボケ+自然なモーションブラーの両立が実現します。
具体的な設定例:晴天屋外で24fps撮影、F2.8・ISO100・SS 1/50秒。この設定に可変NDをND16〜ND32に調整すれば適正露出が得られます。日陰に入ったらND4〜ND8に戻す——この操作をリング1回転で完結できるのが可変NDの強みです。
失敗パターンとして多いのが「可変NDをND400近くまで回してXムラが出る」ケースです。可変NDはカタログスペック上の最大値まで回しきらず、80%程度までに留めるのが実用的。それ以上の減光が必要なら、より濃い固定NDに交換するほうが映像品質を維持できます。
失敗しない選び方|口径・予算・用途の3つで決まる
最初に確認すべきは「レンズのフィルター口径」
NDフィルターを選ぶとき、最初に確認するのは手持ちレンズのフィルター口径(mm)です。レンズ前面に「Ø67」「Ø77」のように刻印されているか、レンズキャップの裏面に記載されています。口径が合わないフィルターは装着できないため、ここを間違えるとそもそも使えません。
複数のレンズを持っている場合は「一番大きい口径に合わせてフィルターを買い、ステップアップリングで小さいレンズにも装着する」のが経済的です。たとえばØ77mmのフィルターを買い、67→77mmのステップアップリング(500〜1,000円程度)を使えば67mmレンズにも装着可能。ただし広角レンズではケラレが出る可能性があるため、超広角(16mm以下)は専用口径で揃えたほうが安全です。
失敗パターンとして、「セット購入でサイズを間違えた」が意外と多いです。AmazonなどでND8+ND64+ND1000のセット商品を選ぶとき、プルダウンの口径選択を見落としてØ52mmを買ってしまい、自分のレンズ(Ø67mm)に合わない——というケース。購入画面で口径を必ず2回確認しましょう。
フィルター口径はレンズごとに異なります。購入前に必ず手持ちレンズの口径を確認してください。レンズ前面の「Ø」マーク横の数字(49mm / 52mm / 58mm / 67mm / 72mm / 77mm / 82mmが主流)が口径です。ステップアップリングを使う場合、レンズの口径よりも大きいフィルターしか装着できません(大→小は不可)。
予算別の賢い揃え方|3,000円から始められる
NDフィルターは1枚3,000円台から手に入るため、カメラアクセサリーの中では比較的手を出しやすいジャンルです。予算別におすすめの揃え方を整理します。
予算5,000円以下:まず1枚なら「可変ND(ND2〜ND400)」がベスト。K&F Concept Nano-Xなら67mm径で約3,000〜4,500円。写真も動画もこの1枚で入門できます。画質にこだわるなら固定のND16(約4,000円前後)を選び、動画と滝撮影の両方に使う手もあります。
予算10,000〜15,000円:固定ND2〜3枚セット(ND8+ND64+ND1000)を揃えると、ポートレート・渓流・超長時間露光すべてに対応可能。KenkoのPRO1D Lotusシリーズで67mm径3枚を揃えると約12,000〜16,000円程度になります。
予算20,000円以上:NiSi True Color可変ND(約8,000〜12,000円程度)+固定ND1000の組み合わせが上級者に人気。可変NDで普段使い、長時間露光が必要な場面だけ固定ND1000に切り替える運用です。
「写真メイン」と「動画メイン」で最適解が変わる
写真メインの人は固定NDを中心に揃えるのが正解です。風景写真では画質の安定性が最優先であり、Xムラのリスクがある可変NDよりも固定NDの確実性を取るべきです。最初の1枚はND64がおすすめ。晴天でも曇天でも「数秒のスローシャッター」が実現でき、使用頻度が高い濃度帯です。
動画メインの人は可変NDが第一選択。光量の変化にリアルタイムで対応できる利便性は、固定NDでは代替できません。価格を抑えたいならK&F Concept Nano-X、色の正確性を重視するならNiSi True Colorが候補。どちらを選んでも「Xムラが出る手前で止める」運用ルールを守れば実用上問題ありません。
写真も動画も両方撮る人は、可変ND(普段使い)+固定ND1000(長時間露光用)の2枚体制がもっとも効率的です。可変NDで日常の撮影をカバーし、風景撮影で超スローシャッターが必要な場面だけND1000を出す運用であれば、荷物も最小限に抑えられます。
おすすめ4ブランドを価格帯別に紹介|性能と予算で選ぶ
Kenko PRO1D Lotus ND|国内最大手の安心感と撥水コーティング
Kenko(ケンコー・トキナー)は国内フィルター市場でシェアNo.1のメーカーで、PRO1D Lotusシリーズはその上位ラインです。撥水・撥油のLotusコーティングにより水滴や指紋が付きにくく、屋外の風景撮影で重宝します。ND8・ND16・ND32・ND64をラインナップし、67mm径で実勢価格 約4,000〜5,500円(2026年6月時点)。
光学ガラスの品質が安定しており、色かぶりが少ないのが特徴です。固定NDのスタンダードとして「迷ったらKenko」と言えるほど実績のあるブランド。量販店でも手に入りやすく、サイズ交換や返品のハードルが低いのも初心者にはメリットです。
デメリットとして、薄枠設計ではあるものの超広角レンズ(14〜16mm)ではわずかにケラレが出る報告があります。超広角で使う場合は「ZX II ND」シリーズ(より薄枠)を検討するか、口径を1サイズ上げてステップアップリングで対応するのが安全策です。
K&F Concept Nano-X 可変ND|コスパ最強でYouTuber御用達
K&F Concept(ケーアンドエフコンセプト)は中国発のカメラアクセサリーブランドで、Nano-Xシリーズの可変NDフィルターがコストパフォーマンスの高さで圧倒的な人気を誇ります。ND2〜ND400(1〜約9段)の調整幅があり、67mm径で実勢価格 約3,000〜4,500円(2026年6月時点)。
日本のカメラ系YouTubeチャンネルで頻繁に紹介されており、「最初の可変ND」として選ばれることが多い製品です。Nano-Xコーティングによる反射防止処理が施され、ゴーストやフレアも実用上問題ないレベルに抑えられています。動画撮影入門者が「とりあえず1枚」で選ぶなら、現時点でもっとも費用対効果が高い選択肢です。
注意点として、ND400付近まで回した際のXムラはやはり発生します。実用範囲はND2〜ND200程度と考え、それ以上の減光が必要なら固定NDに切り替える運用が現実的。また、Amazon等で似た型番の旧モデルも併売されているため、「Nano-X」の記載があるか確認して購入しましょう。
MARUMI DHG ND|色かぶりの少なさで選ぶ国産フィルター
MARUMI(マルミ光機)は長野県に本社を置く国産フィルターメーカーで、DHGシリーズは色かぶりの少なさに定評があります。NDフィルターで多い「青みがかる」「黄色みが出る」といった色の偏りを抑えた設計で、ホワイトバランスの後処理が最小限で済むのがメリットです。
DHG ND8の67mm径は実勢価格 約3,600〜4,500円(2026年6月時点)。Kenkoと近い価格帯で、性能面でも拮抗しています。マルミ独自のデジタルマルチコーティングによるゴースト・フレア軽減も実用的で、逆光シーンでの使用にも強みがあります。
デメリットとしては、Kenkoに比べるとラインナップがやや少なく、ND1000のような超高濃度フィルターは「EXUS ND1000」(上位シリーズ)に限られます。また、量販店によっては在庫が少なく取り寄せになるケースもあるため、確実に入手したい場合はオンライン購入がおすすめです。
NiSi True Color|色再現性を極めたプロ仕様の可変ND
NiSi(ニシ)は中国発のプロ向けフィルターブランドで、True Colorシリーズは「NDフィルター装着時の色かぶりをゼロに近づける」ことをコンセプトにした高級モデルです。可変ND(1〜5段)の67mm径で実勢価格 約8,000〜12,000円程度(2026年6月時点)と他社の2〜3倍の価格帯ですが、色補正の手間を減らせるため映像制作者に支持されています。
一般的な可変NDフィルターは偏光膜の特性上、暖色または寒色に色が転びやすいのが宿命ですが、NiSi True Colorは独自の光学設計でこの課題を大幅に改善。カラーグレーディング前提のLog撮影や、RAW動画撮影で後処理の精度を求める層に選ばれています。
デメリットは価格と入手性。国内正規代理店経由の購入がおすすめですが、在庫切れのタイミングもあります。また、可変範囲が1〜5段(ND2〜ND32相当)と他社の可変NDより狭いため、強い減光が必要な場合は固定ND(NiSiもラインナップあり)との併用が前提になります。
| ブランド | 代表製品 | タイプ | 67mm実勢価格 |
|---|---|---|---|
| Kenko | PRO1D Lotus ND | 固定ND | 約4,000〜5,500円 |
| K&F Concept | Nano-X 可変ND | 可変ND | 約3,000〜4,500円 |
| MARUMI | DHG ND | 固定ND | 約3,600〜4,500円 |
| NiSi | True Color 可変ND | 可変ND | 約8,000〜12,000円程度 |
意外と知らない使い方のコツと保管方法
NDフィルター使用時のホワイトバランスは「手動設定」が安定する
NDフィルターを装着するとカメラに入る光の量と質が変わるため、オートホワイトバランス(AWB)が迷いやすくなります。特に安価なNDフィルターでは暖色〜寒色に色が転ぶことがあり、AWBがその色かぶりを過剰補正して不自然な色味になるケースがあります。
対策はシンプルで、撮影前にホワイトバランスをマニュアル(ケルビン指定)または「太陽光」「曇天」等のプリセットに固定すること。RAW撮影なら後からWBを変更できるため致命的ではありませんが、撮影現場でモニターの色が安定していると構図判断がしやすくなります。
特に動画撮影では撮影後のWB変更に制約がある(Log撮影・RAW動画を除く)ため、撮影前のWB固定がより重要です。NDフィルターを外して一度AWBでWBを合わせ、その値をメモしてマニュアル設定に入力する手順がおすすめです。
フィルター装着時のAF精度低下を防ぐワークフロー
ND64以上の濃いフィルターを装着すると、カメラのAFセンサーに届く光が大幅に減り、ピント精度が落ちるか合焦しなくなることがあります。結論として、ND64以上では「NDなしでピントを合わせ→MFに切り替え→NDフィルターを装着」の手順が安全です。
最新のミラーレスカメラ(像面位相差AF搭載機)ではND64程度までAFが動作するモデルも増えていますが、ND1000ではほぼすべてのカメラでAFが機能しません。無限遠の風景撮影なら「MFで無限遠にセット→フォーカスリングにテープを貼って固定」というプロの技もあります。
見落としがちな注意点として、ピント合わせ後にフィルターをねじ込む際、フォーカスリングに触れてピントがズレることがあります。特にフォーカスバイワイヤ方式(電子制御)のレンズでは問題になりにくいですが、機械式フォーカスリングのレンズでは慎重に作業しましょう。マグネット式NDならこの問題は完全に回避できます。
NDフィルターの保管と手入れ|寿命を延ばす3つの習慣
NDフィルターはガラス製の精密光学部品です。適切に保管すれば10年以上使えますが、雑に扱うとコーティング劣化やカビの原因になります。寿命を延ばすための3つの習慣を紹介します。
1つ目は「使用後はブロアーでホコリを飛ばし、フィルター用クリーニングクロスで拭いてからケースにしまう」こと。レンズクリーニング液を使う場合はフィルター対応品を選びましょう。2つ目は「防湿庫またはジップ付き袋+乾燥剤で保管」。湿度60%以上の環境で長期保管するとカビが生えるリスクがあります。3つ目は「フィルターケースに入れて持ち運ぶ」こと。ポケットやカバンにむき出しで入れると、他の物との接触で表面に傷がつきます。
コーティングが劣化したNDフィルター(色かぶりが以前より強くなった、拭いても取れない曇りがある)は買い替え時です。安価なモデルなら数千円で交換できるため、無理に使い続けるより新品に入れ替えたほうが撮影品質を維持できます。
| 撮影シーン | おすすめND濃度 | 予算目安(67mm) |
|---|---|---|
| 日中ポートレート開放 | ND8(3段) | 約4,000円 |
| 動画撮影(180度ルール) | 可変ND(ND2〜ND400) | 約3,000〜4,500円 |
| 滝・渓流スロー | ND64(6段) | 約4,000〜5,500円 |
| 海の長時間露光 | ND1000(10段) | 約5,000〜6,000円 |
| 街中の人消し | ND1000(10段) | 約5,000〜6,000円 |
まとめ|NDフィルターは1枚持つだけで撮影の幅が広がる
NDフィルターは「光を減らす」というシンプルな機能ながら、スローシャッター表現・日中の開放ボケ・シネマティックな動画撮影と、できることの幅を大きく広げてくれるアクセサリーです。1枚3,000円台から手に入り、一度買えば10年以上使える。コストパフォーマンスで考えても、レンズやボディの次に揃える価値のあるアイテムです。
この記事のポイントを整理します。
- NDフィルターは光量を物理的に減らすフィルター。ND8=3段、ND16=4段、ND64=6段、ND1000=10段の減光
- 固定NDは画質安定・ムラなし。風景写真の長時間露光なら固定NDが第一選択
- 可変NDは1枚で多用途に対応。動画撮影では事実上の標準装備
- マグネット式はワンタッチ交換で固定NDの画質と利便性を両立する新世代タイプ
- 最初の1枚は予算5,000円以下で選べる。可変ND(K&F Concept Nano-X 約3,000〜4,500円)または固定ND64(Kenko PRO1D Lotus 約4,000〜5,500円)がおすすめ
- 写真メインならND64を最優先、動画メインなら可変NDを最優先で揃える
- 購入時はレンズのフィルター口径(Ø○○mm)を必ず確認。サイズ違いは装着不可
まずは手持ちレンズのフィルター口径を確認して、予算5,000円以内の1枚を試してみてください。滝の前に立ったとき、日中の屋外でF1.4に設定したとき、NDフィルターがない時代には戻れなくなるはずです。
※製品の価格・仕様は2026年6月時点の情報です。最新の価格はメーカー公式サイトや各販売店でご確認ください。

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