「減光って聞いたことはあるけど、何のためにやるの?」「NDフィルターって種類が多すぎて、どれを買えばいいかわからない」——そんな疑問を持ってこのページにたどり着いた方は多いはずです。
結論から言えば、減光とはレンズに入る光の量を意図的に抑える技術のこと。これを使いこなすと、滝を白い糸のように流したり、真昼間に絞り開放でとろけるようなボケを出したりと、肉眼では見えない写真表現が可能になります。そしてその中心となるアイテムが「NDフィルター」です。
この記事では、減光の基本から、NDフィルターの種類・段数の選び方、シーン別の撮影テクニック、そして人気3ブランドの比較までを1本にまとめました。読み終わるころには「自分にはどのNDフィルターが必要か」がはっきりわかるはずです。
・減光の仕組みと、写真表現にどう活きるかの基本
・NDフィルターの種類(固定式・可変式・角型)と選び方
・ND番号と段数の早見表&シーン別の使い分け
・人気3ブランド(Kenko・Marumi・NiSi)の価格・性能比較
減光とは?レンズに入る光量を意図的に抑えるテクニック
光を減らすとシャッタースピードと絞りの自由度が変わる
減光とは、レンズからカメラのセンサーに届く光の量を意図的に少なくすることです。「光が多すぎるなら絞りを絞ればいいのでは?」と思うかもしれませんが、絞りを絞るとボケ量が小さくなるため、背景をぼかしたい場面では使えません。また、シャッタースピードを速くしても光量は減らせますが、逆にスローシャッターで動きを表現したい場面では本末転倒です。
減光を使うことで、「絞りはF1.4のまま、シャッタースピードも自由に設定できる」という状態を作れます。つまり減光とは、露出の3要素(絞り・シャッタースピード・ISO感度)に加えて「4つ目の調整軸」を手に入れるテクニックだと考えてください。
たとえば快晴の日中にF1.4で撮ると、ISO100・シャッタースピード1/8000秒でも露出オーバーになることがあります。ここでND8(3段減光)を装着すれば、シャッタースピードを1/1000秒まで落とせるため、露出オーバーを防ぎつつ開放ボケを維持できます。
減光の3つの手段|NDフィルター・絞り込み・ISO下げの使い分け
カメラで光量を減らす手段は主に3つあります。第一はNDフィルター。レンズ前面に取り付ける専用フィルターで、色に影響を与えず光量だけを均一に減らします。これが減光のメインツールです。
第二は絞り込み。F値を大きく(F8→F16など)すれば光量は減りますが、先述の通りボケが小さくなりますし、F16を超えると「小絞りボケ」(回折現象)で画質が低下します。第三はISO感度を下げること。ただし多くのカメラでISO感度の下限は100で、それ以下に下げられません(拡張ISOは画質が劣化する場合があります)。
つまり、絞りもISO感度も「下限がある」ので、光量をもっと減らしたいときにはNDフィルターしか選択肢がありません。特にスローシャッターで水や雲の動きを表現したい場面では、NDフィルターが唯一の解決策になります。
露出補正との違い|減光は物理的に光をカットする
「露出補正をマイナスにすれば同じでは?」という疑問もよく聞きます。露出補正は、カメラが自動で決めた露出値を意図的にずらす機能です。マイナス補正すると写真は暗くなりますが、実際にはシャッタースピードを速くしたり絞りを絞ったりして実現しているだけ。つまり露出補正は結果として光量調整に見えますが、内部ではシャッタースピードか絞りが変わっています。
一方、NDフィルターによる減光は物理的にレンズに入る光をカットします。だからこそ「絞りは開放のまま、シャッタースピードも遅いまま」という露出補正では実現できない組み合わせが可能になるわけです。減光と露出補正は目的が似ているようで、仕組みがまったく異なる点を押さえておきましょう。
NDフィルターの種類は3タイプ|固定式・可変式・角型の特徴を整理
固定式NDフィルター|画質重視で1枚ずつ濃度を選ぶ定番タイプ
固定式NDフィルターは、ND8(3段)やND64(6段)など、減光量があらかじめ決まっている円形フィルターです。構造がシンプルなため光学性能が安定しており、色かぶりやムラが出にくいのが最大のメリットです。
風景写真家やスローシャッター表現をメインにする人には固定式が定番です。ND8・ND64・ND1000の3枚を持っていれば、単体でも重ねづけでも幅広い減光量をカバーできます。デメリットは、濃度ごとに1枚ずつ買い足す必要があること。持ち運ぶ枚数が増える点は、フィルターケースで対処しましょう。
注意点として、同じND64でもメーカーによって色味の傾向が異なります。安価な製品ほど青や黄色に色かぶりしやすいため、信頼できるメーカーのものを選ぶことをおすすめします。
可変式NDフィルター|1枚で幅広い減光量をカバーする万能タイプ
可変式(バリアブル)NDフィルターは、前枠を回転させることで減光量を連続的に調整できるタイプです。たとえばND2〜ND32(1〜5段)の範囲を1枚でカバーできる製品があり、フィルター交換の手間なく素早く減光量を変えられるのが強みです。動画撮影では特に重宝します。
動画撮影では「180度ルール」(フレームレートの2倍の分母のシャッタースピードに固定する)が基本です。たとえば30fpsなら1/60秒固定。明るさが変わっても絞りやISOを変えたくない場面では、可変NDフィルターでリアルタイムに減光量を調整するのがプロの手法です。
ただし、可変式は2枚の偏光板を重ねた構造のため、最大減光付近で「Xムラ」と呼ばれるクロス状の色ムラが出やすいという弱点があります。価格帯で差が大きく、安価な製品ほどムラが顕著です。実勢価格5,000円以下の製品は写真用途では慎重に選んでください。
角型NDフィルター|ハーフNDが使えるのは角型だけ
角型NDフィルターは、専用ホルダーをレンズに装着し、四角い板状のフィルターをスライドして使うタイプです。最大のメリットは「ハーフND」が使えること。ハーフNDとは、フィルターの上半分だけが減光されている特殊なフィルターで、空と地面の明暗差が大きい風景撮影で威力を発揮します。
たとえば夕焼けの風景で、空に露出を合わせると地面が真っ暗、地面に合わせると空が白飛びする——この問題を、ハーフNDフィルターなら光学的に解決できます。角型はフィルターの上下位置を自由に調整できるため、水平線の位置に合わせて減光の境目を動かせるのも強みです。
デメリットは、ホルダーシステムの初期投資が必要な点です。ホルダー+フィルター1枚で2〜3万円程度になるため、まず円形の固定式NDで減光の効果を体感してから導入を検討するのが現実的です。
ハーフND=フィルターの半分だけに減光効果があるフィルター。境界がなだらかな「ソフトグラデーション」と、くっきりした「ハードグラデーション」の2種類がある。水平線がはっきりしている海の撮影にはハード、山並みのように境界が不規則な場面にはソフトが向いている。
ND番号と段数の早見表|ND8からND1000まで一覧で比較
ND番号の読み方|数字が大きいほど暗くなる
NDフィルターのパッケージに書かれている「ND8」「ND64」「ND1000」といった数字は、光をどれだけ通すかを示しています。ND8なら光量が1/8(元の光の12.5%だけ通す)、ND1000なら光量が1/1000(元の光の0.1%しか通さない)という意味です。
数字が大きいほど暗くなると覚えておけば迷いません。よく使われるのはND4(2段)、ND8(3段)、ND16(4段)、ND64(6段)、ND1000(10段)あたりです。ND2やND500といった中間的な濃度もありますが、まずはこの5種類を把握しておけば十分です。
注意点として、メーカーによって表記が異なる場合があります。たとえばND64を「ND1.8」と表記するメーカーもあります(1.8は光学濃度を示す対数表記)。購入時は「○段分の減光」という段数表記を基準にすると混乱しません。
段数とシャッタースピードの関係|1段で速度は2倍に
「段数」とは露出の変化量を示す単位で、1段分の減光でシャッタースピードを2倍の時間に延ばせます。たとえばNDフィルターなしで1/1000秒が適正露出の場面にND8(3段)を付けると、1/1000秒→1/500秒→1/250秒→1/125秒と3段分遅くできるわけです。
ND1000(10段)なら同じ条件で1/1000秒→約1秒。これだけスローシャッターにできれば、水の流れを白糸のように表現したり、雲を流したりする撮影が可能になります。
実は、段数の感覚をつかむにはシャッタースピードの早見表を1つ覚えておくだけで十分です。下の比較表を手元に置いておくと、撮影現場で「今日はND何番を使えばいいか」がすぐに判断できます。
| ND番号 | 段数 | 光量 | 元が1/1000秒の場合 |
|---|---|---|---|
| ND4 | 2段 | 1/4 | 1/250秒 |
| ND8 | 3段 | 1/8 | 1/125秒 |
| ND16 | 4段 | 1/16 | 1/60秒 |
| ND64 | 6段 | 1/64 | 1/15秒 |
| ND500 | 9段 | 1/500 | 約2秒 |
| ND1000 | 10段 | 1/1000 | 約1秒 |
重ねづけの計算方法|段数は足し算、ND番号は掛け算
NDフィルターは2枚以上重ねて使うことができます。計算方法は2つの表記で異なるので注意してください。段数表記では足し算です。ND8(3段)+ND64(6段)=9段。ND番号表記では掛け算になります。ND8×ND64=ND512相当です。
重ねづけはフィルター枚数を節約できる便利なテクニックですが、2枚以上重ねるとケラレ(画面四隅が暗くなる現象)が起きやすくなります。特に広角レンズ(焦点距離24mm以下)では要注意です。薄枠設計のフィルターを選ぶことでケラレのリスクは軽減できます。
また、重ねづけの際は減光効果の大きいフィルターを外側(被写体側)に装着してください。こうすることで、フィルター面で乱反射する光を最小限に抑えられます。
まず揃えるべき3枚|ND8・ND64・ND1000で全シーンに対応
NDフィルターをこれから揃えるなら、ND8(3段)・ND64(6段)・ND1000(10段)の3枚がおすすめです。この3枚があれば、単体で3段・6段・10段、2枚重ねで9段・13段・16段、3枚重ねで19段と、ほぼすべての撮影シーンをカバーできます。
「まず1枚だけ買いたい」という場合はND8を推奨します。滝や渓流のスローシャッター、日中の開放撮影など使用頻度が高く、減光量も強すぎないのでファインダーが暗くなりにくく、初心者でも扱いやすいためです。
逆にND1000(10段)は長時間露光専用と割り切って使うフィルターです。装着するとファインダーがほぼ真っ暗になるため、構図とピントは装着前に完了させておく必要があります。
この場面で減光が必要になる|シーン別の活用法5つ
滝・渓流の白糸表現|ND8〜ND64で1/2秒〜数秒のスローシャッター
滝や渓流の水流を白い糸のように表現する「スローシャッター撮影」は、NDフィルターの代表的な使い方です。日中の明るい環境では、NDフィルターなしだとF16・ISO100に絞っても1/60秒程度が限界。これでは水は止まって写ります。
ND8(3段)を使えば1/8秒前後まで落とせるので、水流にある程度の動感が出ます。さらにND64(6段)なら1秒前後まで引き延ばせるため、水が白いベールのように滑らかに流れる表現が可能です。渓流の水量や表現したい雰囲気に合わせて、ND8〜ND64の範囲で選ぶのがポイントです。
注意点として、シャッタースピードが1/4秒を超えると手持ちではブレます。三脚は必須装備と考えてください。
海・湖の水面を滑らかに|ND1000で30秒以上の長時間露光
海や湖の水面を鏡のように滑らかに撮るには、30秒〜数分間のバルブ撮影が必要です。ND1000(10段)を使えば、日中でもこの超長時間露光が可能になります。波のざわめきが消え、雲が流れ、幻想的な風景写真に仕上がります。
ND1000で30秒露光するときの条件目安は、ISO100・F8〜F11・NDフィルターなしで適正露出が1/30秒前後の場面です。これにND1000(10段)を加えると、1/30秒×1000=約30秒になります。曇天ではさらに露光時間が延びるため、2〜3分以上の露光になることもあります。
長時間露光特有の注意点として、ファインダーやEVFからの光漏れがあります。露光中はアイピースシャッターを閉じるか、付属のアイピースカバーを装着してください。
日中の開放ボケ|明るいレンズ+ND4〜ND8で白飛びを防ぐ
F1.4やF1.8の大口径レンズを日中屋外で開放撮影すると、ISO100・最速シャッタースピード(1/4000秒〜1/8000秒)でも露出オーバーになることがあります。ここでND4(2段)やND8(3段)を装着すれば、開放F値のまま適正露出が得られます。
ポートレート撮影でF1.4の柔らかいボケを日中でも使いたい場面や、50mm F1.2のような超大口径レンズで街中スナップを撮る場面で重宝します。動画撮影でも、180度ルールに従いシャッタースピードを1/60秒に固定したまま絞りを開放にしたい場合、ND4〜ND8は必須です。
実はNDフィルターなしでも、カメラの「電子シャッター」を使えば1/16000秒や1/32000秒まで速くできる機種もあります。ただし電子シャッターは動体歪み(ローリングシャッター歪み)が出るため、動きのある被写体には不向きです。NDフィルターのほうが画質面で安心な選択肢と言えます。
街中の人消し・光跡撮影|ND400〜ND1000で数十秒露光
観光地や都市の風景で「通行人を消す」テクニックにもNDフィルターが活躍します。ND400〜ND1000を使って30秒〜数分の長時間露光をすると、歩いている人は写真にほとんど写り込みません。建物や道路など動かないものだけが鮮明に残り、人がいないかのようなクリーンな都市風景が撮れます。
夜景撮影では、車のヘッドライト・テールライトが光の線として写る「光跡撮影」にも減光テクニックが使えます。薄暮の時間帯(マジックアワー)に空の色を残しつつ光跡を撮りたい場合、ND8〜ND16程度で露光時間を10〜30秒に延ばすと、空のグラデーションと光跡を同時に捉えられます。
注意点として、長時間露光では「長秒時ノイズ」が発生しやすくなります。カメラの「長秒時ノイズリダクション」機能をONにすると軽減できますが、露光時間と同じだけの処理時間がかかるため、撮影テンポが遅くなる点はトレードオフです。
| 撮影シーン | おすすめND | 露光時間の目安 |
|---|---|---|
| 滝・渓流(動感表現) | ND8〜ND64 | 1/2秒〜数秒 |
| 海・湖(鏡面表現) | ND1000 | 30秒〜数分 |
| 日中の開放ボケ | ND4〜ND8 | 通常のSS範囲 |
| 人消し・光跡 | ND400〜ND1000 | 30秒〜数分 |
| 動画撮影(180度ルール) | 可変ND(ND2〜ND32) | 1/60秒固定(30fps時) |
初めてのNDフィルター選びで失敗しない3つのチェックポイント
フィルター径を間違えると取り付けできない|レンズのΦ表記を確認
NDフィルターで最も多い失敗が「買ったフィルターがレンズに合わない」というケースです。レンズにはそれぞれフィルター径(Φで表記)が決まっており、Φ67mmのレンズにΦ77mmのフィルターは取り付けできません。
フィルター径はレンズ前面やレンズキャップの裏側に「Φ67」のように刻印されています。手持ちのレンズのフィルター径を購入前に必ず確認してください。複数のレンズを持っている場合、フィルター径が異なるレンズがあるはずです。
対策として「ステップアップリング」を使う方法があります。たとえばΦ67mm→Φ77mm変換のステップアップリングを付ければ、Φ77mmのフィルターをΦ67mmのレンズに装着できます。最も口径の大きいレンズに合わせてフィルターを買い、他のレンズにはステップアップリングで対応するのが経済的です。ステップアップリングは1個500〜1,500円程度で購入できます。
NDフィルターを買う前に、使いたいレンズのフィルター径(Φ○○mm)を必ず確認してください。レンズ前面の刻印、またはメーカー公式サイトのスペック表に記載されています。フィルター径が異なるレンズを複数持っている場合は、最も大きい径に合わせてフィルターを購入し、ステップアップリングで他のレンズにも使い回すのがコスパの良い方法です。
コーティングの差が画質に直結する|撥水・反射防止は必須レベル
NDフィルターの価格差の大部分は「コーティング品質」の差です。高品質なコーティングが施されたフィルターは、反射を抑えてゴーストやフレアを防ぎ、撥水・撥油加工で水滴や指紋が付きにくくなります。
滝や海辺での撮影では水しぶきがフィルター表面に付着するため、撥水コーティングの有無は実用面で大きな差になります。水滴が付いたまま撮影すると画面にボヤけた斑点が写り込み、せっかくのスローシャッター写真が台無しです。
反射防止コーティング(マルチコーティング)も重要です。コーティングなしのフィルターはフィルター面で光が反射し、フレア(画面全体が白っぽくなる現象)やゴースト(光の斑点)が出やすくなります。実勢価格で3,000〜5,000円程度の差であれば、マルチコーティング付きを選ぶ価値は十分あります。
色かぶりは安価なフィルターほど出やすい|比較してから選ぶべき理由
NDフィルターは「色に影響を与えず光量だけを減らす」のが理想ですが、実際には安価な製品ほど色かぶりが発生します。特に多いのが青みがかったり、黄色みが出たりするケースです。ND1000のような高濃度フィルターほど色かぶりが顕著になります。
色かぶりはRAW現像でホワイトバランスを補正すればある程度修正できますが、補正幅が大きいほど画質の劣化リスクがあります。JPEG撮って出し派の人は、色かぶりの少ないフィルターを選んだほうが後処理の手間が省けます。
意外と知られていないのですが、同じメーカーでもND8とND1000で色かぶりの傾向が異なることがあります。これはガラスの着色方法が濃度によって異なるためです。可能であれば、購入前にレビューサイトで色かぶりの比較を確認しておくことをおすすめします。
NDフィルターを使った撮影の手順と失敗を防ぐコツ
フィルター装着前に構図とピントを決める|暗くなるとAFが迷う
NDフィルターを使った撮影で初心者がやりがちな失敗が「NDフィルターを付けた状態で構図を決めようとする」ことです。ND64以上の高濃度フィルターを装着すると、ファインダーやライブビューが暗くなり、構図の確認が困難になります。ND1000ではほぼ真っ暗です。
正しい手順は、まずNDフィルターを外した状態で構図を決め、ピントを合わせること。ピントが合ったらAFをMF(マニュアルフォーカス)に切り替えてピント位置を固定し、その後でNDフィルターを装着します。この順番を守るだけで、ピンボケや構図ミスの失敗は大幅に減ります。
ミラーレスカメラの場合、EVF(電子ビューファインダー)のゲインアップ機能で暗い画面を明るく表示できる機種もありますが、ND1000レベルでは限界があります。一眼レフの光学ファインダーでは物理的に暗くなるため、この手順は必須です。
三脚とリモートレリーズは長時間露光の必須装備
NDフィルターを使ったスローシャッター撮影では、三脚が必須です。シャッタースピードが1/焦点距離(例: 50mmレンズなら1/50秒)より遅くなると手ブレが発生するため、三脚に固定して撮影します。
三脚に加えてリモートレリーズ(リモートシャッター)も用意してください。シャッターボタンを指で押す振動だけでもブレの原因になります。リモートレリーズがない場合は、カメラのセルフタイマー(2秒)で代用できます。
30秒を超える露光ではカメラの「バルブモード(B)」を使います。バルブモードではシャッターボタンを押している間だけシャッターが開くため、リモートレリーズのロック機能が必要です。スマホアプリでリモート操作できるカメラも増えていますが、Bluetooth接続の遅延で正確なタイミングが取りにくい場合があるので、有線リモートレリーズのほうが確実です。
露出オーバー・ケラレ・ゴーストの3大トラブルと対処法
NDフィルター撮影で起きやすいトラブルを3つ紹介します。まず「露出オーバー」。ND番号の計算を間違えて減光量が足りない場合に起こります。撮影後に必ずヒストグラムを確認し、右端(ハイライト)がクリップしていないかチェックしてください。
次に「ケラレ」。フィルターの枠が画面四隅に写り込み、暗くなる現象です。特にフィルターを2枚重ねしたときや、広角レンズ(焦点距離24mm以下)で発生しやすくなります。対策は薄枠フィルターを選ぶこと。広角レンズユーザーは購入時に「薄枠」「ローフレーム」と記載のある製品を選びましょう。
最後に「ゴースト・フレア」。強い光源(太陽など)がフレーム内や画角の近くにあると、フィルター面の反射でゴーストが出やすくなります。対策はマルチコーティング付きのフィルターを使うこと、そしてレンズフードを装着すること。NDフィルター使用時はフードが付けられない場合がありますが、手や帽子でレンズ上部を覆うだけでもフレア軽減に効果があります。
NDフィルターを付けたままオートフォーカスは使えますか?
ND4〜ND16程度の低濃度であれば、多くのカメラでAFが動作します。ただしND64以上ではAFが迷ったり合焦しなくなることがあります。高濃度NDを使うときは、フィルター装着前にピントを合わせてからMFに切り替えるのが確実です。
NDフィルターはプロテクトフィルターの上に重ねて大丈夫?
可能ですが、フィルター枚数が増えるとケラレやゴーストのリスクが高まります。NDフィルター使用時はプロテクトフィルターを外し、NDフィルターだけを装着するのが画質面でベストです。
人気NDフィルター3ブランドを価格・画質で比較
Kenko ZXシリーズ|国内最大手の安心感と入手しやすさ
Kenko(ケンコー・トキナー)は国内フィルターメーカーのトップブランドです。NDフィルターのラインナップも豊富で、エントリー向けの「PRO1D」シリーズからハイエンドの「ZX(ゼクロス)」シリーズまで幅広く展開しています。
ZXシリーズはフローティングフレームシステムを採用しており、フィルター枠の歪みがガラスに伝わりにくい設計です。撥水・撥油コーティングも施されており、アウトドア撮影でも安心して使えます。Kenko公式のNDフィルターガイドでラインナップの詳細を確認できます。
ZX ND16(82mm)で実勢価格 約12,800円程度(2026年6月時点)と、ハイエンドフィルターとしては手が届きやすい価格帯です。家電量販店やカメラ専門店で実物を確認できるのも国内ブランドならではのメリットです。
Marumi EXUSシリーズ|帯電防止コーティングでホコリに強い
Marumi(マルミ光機)のEXUSシリーズは、帯電防止コーティングが最大の特徴です。フィルター表面に静電気が起きにくいため、ホコリの付着を大幅に軽減できます。屋外撮影では風でホコリが舞いやすいため、この機能は実用面で地味に効きます。
EXUS ND64(82mm)で実勢価格 約11,300円程度(2026年6月時点)。Kenkoと同等の価格帯でありながら、帯電防止という独自の付加価値があります。Marumi公式のNDフィルター解説ページでコーティング技術の詳細を確認できます。
デメリットを挙げるなら、ND1000などの超高濃度NDのラインナップがKenkoやNiSiに比べてやや少ない点です。スタンダードな濃度(ND8〜ND64)を中心に使うなら、コスパの良い選択肢と言えます。
NiSi TRUE COLORシリーズ|色再現性を重視するなら最有力
NiSi(ニシ)は中国発のフィルターブランドで、近年プロカメラマンからの評価が急上昇しています。最大の強みは「TRUE COLORテクノロジー」と呼ばれる独自の偏光膜技術で、可変NDフィルターの弱点であるクロスムラ(Xムラ)を大幅に抑制しつつ、色再現性の高さを実現しています。
TRUE COLOR ND VARIO 1-5stops(82mm)で実勢価格 約25,300円程度(2026年6月時点)と、KenkoやMarumiの固定NDに比べると高価です。ただし可変式で1〜5段をカバーできるため、固定ND2〜3枚分の役割を1枚で担えると考えればコスパは悪くありません。NiSi公式サイトでTRUE COLORテクノロジーの技術解説が確認できます。
角型フィルターシステムでもNiSiは定評があり、ハーフND+NDの組み合わせで風景写真を追求するなら検討すべきブランドです。デメリットは国内の家電量販店での取り扱いが少ない点。購入はオンラインが主になります。
| 項目 | Kenko ZX ND16 | Marumi EXUS ND64 | NiSi TRUE COLOR VARIO |
|---|---|---|---|
| タイプ | 固定式 | 固定式 | 可変式(1〜5段) |
| 減光量 | 4段(ND16) | 6段(ND64) | 1〜5段(ND2〜ND32) |
| 実勢価格(82mm) | 約12,800円 | 約11,300円 | 約25,300円 |
| コーティング | 撥水・撥油 | 帯電防止・撥水 | TRUE COLOR偏光膜 |
| 入手しやすさ | ◎ 量販店で購入可 | ◎ 量販店で購入可 | △ オンライン中心 |
| おすすめユーザー | 初めてのND購入者 | 屋外撮影が多い方 | 動画・色再現性重視派 |
まとめ|減光を味方にすれば写真の幅は一気に広がる
減光とは、レンズに入る光量を意図的に抑えることで、絞り・シャッタースピード・ISO感度だけでは実現できない表現を可能にするテクニックです。そしてその中心ツールがNDフィルター。種類は固定式・可変式・角型の3タイプがあり、撮影スタイルや被写体に合わせて選ぶことで、滝の白糸表現、日中の開放ボケ、都市の人消しといった、肉眼では見えない写真の世界が広がります。
この記事の要点を整理します。
- 減光とはレンズに入る光を物理的にカットする技術。露出補正とは仕組みが異なる
- NDフィルターは固定式(画質安定)、可変式(利便性重視・動画向き)、角型(ハーフND対応)の3タイプ
- ND番号は大きいほど暗い。ND8=3段、ND64=6段、ND1000=10段
- まず揃えるべき3枚はND8・ND64・ND1000。1枚だけならND8から
- フィルター購入前にレンズのフィルター径(Φ○○mm)を必ず確認する
- 撮影手順の鉄則は「フィルター装着前に構図とピントを決める」こと
- ブランド選びはKenko・Marumiが入門に最適。色再現性を重視するならNiSiが有力
まずはND8を1枚購入して、近所の公園の噴水や小川でスローシャッター撮影を試してみてください。シャッタースピード1/4秒〜1秒程度で水流の動きが写り、NDフィルターの効果を実感できるはずです。そこから撮影の幅を広げたくなったら、ND64やND1000を追加していけば、長時間露光の世界がさらに開けていきます。
予算5,000〜8,000円でND8(67mm or 77mm)を1枚購入 → 三脚に固定して水の流れをスローシャッター撮影 → 効果を実感したらND64・ND1000へステップアップ。この3ステップで減光テクニックは一通り身につきます。
※製品の価格・仕様は2026年6月時点の情報です。最新情報は各メーカー公式サイトでご確認ください。

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